研究課題
申請者は初年度までに、膵臓がんで高頻度で見られるKras遺伝子の恒常活性型変異が膵臓がん幹細胞においてc-Jun N-terminal Kinase (JNK)経路を活性化し、このKras-JNK経路を薬理学的もしくは遺伝学的に抑制することで膵臓がん幹細胞性を抑制することをin vitro, in vivoにおいて見出した。一般的にがん幹細胞では薬剤抵抗性が高いことが知られているが、JNKを薬理的に抑制しがん幹細胞性を失わせることで薬剤抵抗性をも減少させ、通常使用している抗癌剤にて癌幹細胞が根治可能ではないか、との仮説をたて、以下の研究を行った。まず膵臓がん幹細胞株PANC1, PSN1 CSLC (Cancer stem-like cells)をJNK阻害薬であるSP600125で処理した後に、SP600125を除いた状態でgemcitabineおよび5-FUにて細胞を処理し検討を行った所、gemcitabineもしくは5-FU単剤に比してSP600125前処理を加える事で感受性亢進することを見出した。また、膵がん幹細胞では非がん幹細胞に比して抗癌剤処理後の活性酸素種(ROS)の上昇が低く抑えられるがJNK阻害により解除され上記抗癌剤誘導性細胞死にはこのROSの上昇が必要であることも明らかとなった。さらに、これらの研究で使用されたJNK阻害薬はヒトにおいての安全性が担保されたものではないためヒトへの応用に適さないことから、子宮内膜症の治療薬として開発されヒトに対して安全性が確認されたJNK阻害薬であるAS602801を使用して、膵臓がん、卵巣がん、肺癌、神経膠芽腫の各種がん幹細胞に対して研究を行った所、がん幹細胞性を失わせるとともに腫瘍発生をも抑制することを明らかにした。以上の結果を共に国際誌であるOncotargetに投稿し、受理された。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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