研究課題
我々は難治性癌である膠芽腫において骨形成因子BMP4に加えてBMPシグナル抑制因子(Smad6)の特異的siRNA (siSmad6)でBMPシグナルをさらに増強したところ、脳腫瘍幹細胞 TGS-01の未分化性を顕著に阻害し、腫瘍形成能を劇的に抑制することを見出した。この時、BMP4とsiSmad6によって発現が変動する標的遺伝子の中で脳腫瘍幹細胞の未分化性維持の阻害に関与が予測される因子を多数同定し、その阻害メカニズム (Hedgehogシグナルなどを中心に) を明らかにすることを進めている。この他に、RNA-Seqを用いたことによって、脳腫瘍幹細胞内でいくつかの融合遺伝子を発見することに成功した。この中で1つの融合遺伝子に着目し、機能解析や腫瘍形成への関与について調べた。その結果、この融合遺伝子を高発現するとNIH3T3細胞をトランスフォームさせ腫瘍形成能を獲得することが分かった。さらにヒト膠芽腫細胞U87-MGにこの融合遺伝子を過剰発現させることで腫瘍形成能が増強した。さらに、この融合遺伝子はStat5bを恒常的に活性化することが分かった。本研究で得られた成果は膠芽腫の新たな治療法の開発とともに、今回発見した融合遺伝子による癌発生のメカニズムの新たな知見として重要な研究となることが期待される。
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