研究課題
複雑な細胞間相互作用によって形成される癌微小環境を理解するには、培養皿上の疑似環境でなく生体内の癌微小環境をそのままイメージングすることが必要である。本研究の目的は、癌微小環境における腫瘍関連マクロファージ(Tumor-Associated Macrophage, TAM)に注目し、腫瘍関連マクロファージが生体内のいつ、どこで発生するのか、どのようなシグナル伝達分子が関わっているのかを、生体イメージングと多次元データの半自動化解析によって明らかにすることである。平成26年度の研究では、FRETマウス骨髄から回収した単球前駆細胞をレシピエントマウスに移植し、マクロファージの生体内FRETイメージングを行った。レシピエントマウスには癌細胞を移植(担癌)し、担癌部周囲または転移巣を観察した。また、マウスを生きたまま観察するために、Imaging windowを設計し、観察系を立ち上げた。マクロファージが癌細胞周囲に集まっている様子を数日間連続してイメージングすることに成功した。また薬剤によるマクロファージのdepletionを行うことで、癌にも影響を及ぼすことを確認した。当初の予定では、単球前駆細胞をM1またはM2マクロファージ(TAM-like)に予めin vitroで分化させてから移植に用いる予定であったが、M1、M2という分類自体がもはや時代遅れという情報を複数の情報源から入手したため、この分類にはこだわらず、癌細胞との相互作用や運動性の違いに注目することにした。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度にはimaging windowを用いた撮影系を立ち上げることができた。また、画像データから生体由来の自家蛍光物質を除くプログラムなどを作成した。In vitroでのマクロファージ分化とイメージングも行った。当初は、単球前駆細胞をM1またはM2マクロファージ(TAM-like)に予めin vitroで分化させてから移植に用いる予定であったが、M1、M2という分類自体がもはや時代遅れという情報を複数の情報源から入手したため、分化後の移植は保留した。
平成27年度には、ERK、PKAおよびRhoファミリー分子の活性変化を、癌細胞とマクロファージの両方で、同時にFRETイメージングする予定である。癌細胞とマクロファージを区別するため、別の蛍光タンパク質発現マウスを現在準備中である。データ解析においては三次元でのデータを扱い、運動速度、運動方向性などを測定できるように進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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