研究課題/領域番号 |
26830075
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
牧野 晴彦 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (20467707)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | EGFR核内移行 / DNA損傷修復 / 非小細胞肺癌 / EGFR遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
①各種抗がん剤による肺癌細胞株におけるDNA損傷誘導の検討 野生型EGFR発現細胞株(A549)と変異型EGFR発現細胞株(exon19欠失型変異;PC9,HCC827 とexon21変異型;H1975)、ヒト繊維芽細胞の一つである1BR3にそれぞれ野生型、変異型EGFR(欠失型・変異型)を強発現させて、EGFRタイプの違う細胞に対する白金製剤とトポイソメラーゼ阻害薬の50%阻害濃度の違いを検討し、トポイソメラーゼ阻害薬では変異型に有効である傾向があったが、白金製剤では明らかな違いを認めていない。DNA損傷修復過程については、各種細胞においてDNA損傷部位に集積する53BP1とリン酸化H2AXの個数によって検討しているが、トポイソメラーゼ阻害剤使用後のDNA損傷修復はEGFR変異型では損傷が進み、EGFR野生型では損傷が修復される傾向にあるのを確認している。トポイソメラーゼ阻害薬はEGFR変異型細胞において有用である可能性がある。 ②各種抗癌剤によるDNA損傷修道に対してEGFR核内移行の有無の検討 EGFR野生型がん細胞(A549)とEGFR変異型がん細胞(PC9)に対する薬剤使用後の核内蛋白抽出を継時的に行いEGFR発現をウェスタンブロッティング法で検討している。残念ながら各内への移行は確認されていない. ③EGFRモノクローナル抗体によるEGFR核内阻害とDNA損傷修復に与える影響 EGFRモノクローナル抗体の腫瘍増殖阻害効果はシスプラチンとの併用において相加効果にとどまった。今後他の薬剤との相加相乗効果を確認していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初目的であった各種EGFRを持った非小細胞肺癌細胞株にDNA損傷マーカーである53BP1にGFPを結合させたプラスミドを導入し、生細胞でDNA損傷修復過程の違いを確認しようとした試みは細胞周期S期のマーカーであるPCNAの導入はできたが、53BP1の導入には成功していない。これに多くの時間を費やしたことが全体的に遅れてしまった原因の一つであると考えられる。導入細胞を様々な細胞で試しつつ不可能な場合は従来通り継時的な固定検体でのDNA損傷修復過程測定アッセイを行いデータの集積に努める。DNA核内移行も蛋白抽出だけでなく、共焦点顕微鏡を用いた蛍光染色法による評価を行っているところである。マウス皮下におけるxenograftは野生型EGFR細胞と変異型EGFR細胞それぞれにおいて作製に成功しており、DNA損傷修復における主要蛋白発現を免疫染色で確認している。今後抗がん剤投与においてこれらのリン酸化にいかに影響を与えるか、EGFRの核内への移行が組織でも確認されるかを検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
野生型EGFR発現がん細胞と変異型EGFR発現がん細胞に加えて、ヒト繊維芽細胞に野生型・変異型それぞれを導入した細胞は、その良好で安定した発現を確認しておりこれを用いて抗がん剤投与後のDNA損傷修復過程の違いを検討する。細胞株とEGFRトランスフェクション細胞で同様にEGFR変異がある細胞で、DNA損傷修復を起こす薬剤の抗腫瘍効果が強いことことを証明する。 マウスモデルでは、単に抗腫瘍効果が違うだけでなくDNA損傷修復蛋白の発現やリン酸化の程度によって抗腫瘍効果が予測できるのではないかという仮説を証明する。 トランスフェクション細胞とマウスxenograftモデルにおけるDNA損傷修復蛋白の評価方法は定まってきたので、今後はその実験結果を収集する段階である。 細胞株と動物実験で整合性が得られる実験結果が出れば、学会発表や論文としてまとめる方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体やそのほかの薬品・消耗品が研究室内で共用できたため、細胞実験において必要な経費がかなり節約できた。マウスの実験が準備段階までしか進まず、その費用が持ち越しとなったことが大きな原因と考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスXenograftモデルにおいて、抗がん剤による抗腫瘍効果・DNA損傷修復蛋白のリン酸化の検証のためマウス購入経費が27年度には相当かかると予想され、昨年度の経費が必要となる。予備実験は終了しており、比較的スムーズに実験が進むと予想される。
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