研究課題/領域番号 |
26830076
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
神吉 けい太 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10516876)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / レチノイン酸 / PRAME |
研究実績の概要 |
26年度は肝細胞癌における腫瘍抗原PRAMEの機能解析、および肝癌臨床検体における発現解析を行った。PRAME発現アデノウイルスベクターを作成し、PRAME強発現におけるレチノイン酸シグナルへの影響をルシフェラーゼレポーターアッセイにより調べた。これまでPRAMEはレチノイン酸シグナル抑制因子であると報告されてきた。しかしながらこれと異なり、PRAME強制発現によりレチノイン酸シグナルのシグナル活性が上昇した。また、siRNAを用いたPRAMEノックダウンの実験においてはレチノイン酸シグナルが抑制された。これらの結果は肝細胞癌において、PRAMEがレチノイン酸シグナルの促進因子であることを示唆している。今後、安定発現株の作成を行い、さらに検討を進める。またPRAMEはポリコーム遺伝子であるEZH2と結合し機能を発揮することから、EZH2の発現にも着目して解析を進める予定である。 一方、ヒト肝細胞癌臨床検体における遺伝子発現解析を行い、肝細胞癌病態との関連や臨床病理学的意義検討した。その結果、①肝細胞癌において、癌部でPRAME遺伝子が発現している症例では腫瘍数が多く、腫瘍サイズも大きいなど癌悪性度が高くなっていることが明らかになった。②非癌部でPRAME遺伝子が発現している肝細胞癌症例では、手術後の再発率が高く、生存期間が短いことが明らかになった。③肝細胞癌患者におけるPRAME発現は、肝細胞癌の悪性度の指標になるのみならず、再発を予測するマーカーとなり得る可能性が示唆された。これらの結果をまとめ、第50回日本肝臓学会総会でポスター発表を行った。現在もさらなる症例の蓄積を行っており、研究論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はPRAME機能解析の一環として強発現およびノックダウンによるレチノイン酸シグナルへの影響を検討したが、これまでの報告と異なり、PRAMEがレチノイン酸シグナルの促進因子であることを示唆する結果となった。この件について再現性を確認するために複数の細胞株や実験条件で検討を行ったため、当初の計画より遅れる結果となった。一方で同時に進めていたPRAMEの臨床検体における発現解析では、癌部ではPRAME発現と癌の悪性度との相関関係が示唆され、また非癌部ではPRAME発現と再発との相関が示唆された。27年度はPRAME発現安定細胞株を作成し、メチル化アレイ解析、cDNAアレイ解析を行うことによって、PRAME発現によって変動する遺伝子群の同定に取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果は肝細胞癌において、PRAMEがレチノイン酸シグナルの促進因子であることを示唆している。この結果をさらに検証するために、安定発現株の作成を行い、さらに検討を進める。またPRAMEはポリコーム遺伝子であるEZH2と結合し機能を発揮することから、EZH2の発現にも着目して解析を進める予定である。 さらに27年度の目標としてメチル化解析、遺伝子発現解析を行うことによって、PRAME発現によって変動する遺伝子群の同定に取り組みたい。肝癌臨床検体の遺伝子発現解析の結果からは、、癌部ではPRAME発現と癌の悪性度との相関関係が示唆され、また非癌部ではPRAME発現と再発との相関が示唆された。これらの悪性形質獲得機構を裏付けるような遺伝子変動パターンを見出したいと考えている。 研究代表者は27年度より所属研究機関を異動したため、当初予定していた研究計画内容の遂行が難しくなった。そこで動物実験の計画を変更し、細胞実験系を中心に解析を行うこととし、動物実験のために計上していた費用は、小型機器や消耗品の購入に充てる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度はPRAME安定発現細胞株の樹立と、メチル化アレイ解析、cDNAアレイ解析を行う予定であったが、一過性発現およびノックダウンによるPRAME機能解析の結果が従来の報告と異なる結果となった。26年度はこの結果を十分に検証することに充てたため、メチル化アレイ解析、cDNAアレイ解析を行うことができなかった。したがってこのための予算を27年度に持ち越したため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度はPRAME安定発現細胞株の樹立と、メチル化アレイ解析、cDNAアレイ解析を行う予定である。その結果、癌悪性化の標的遺伝子として見出されたものに対し、機能解析を行う予定である。 また研究代表者は27年度より所属研究機関を異動したため、当初予定していた研究計画内容の遂行が難しくなった。そこで動物実験の計画を変更し、in vitro実験を中心に解析を行うこととし、動物実験のために計上していた費用は、小型機器や消耗品の購入に充てる予定である。
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