研究実績の概要 |
本研究は腫瘍抗原として知られるPRAMEの発現意義と癌悪性化に関わるメカニズムについて研究を行った。PRAMEはレチノイン酸シグナルの抑制性共役因子(co-repressor)であり、癌の悪性化、予後の低下と関連すると報告されている(Nature 415,530-6,2002, Cell 122,835-47,2005)。そこで肝細胞癌株を用いてPRAMEの機能解析を行った。複数の肝細胞癌株に対しPRAMEを強制発現またはノックダウンを行い、レチノイン酸シグナルで転写が活性化するDR5レポーターアッセイを行ったところ、シグナル抑制作用は認められなかった。 肝細胞癌におけるPRAMEの発現意義を詳しく知るために、100例の肝細胞癌臨床検体(癌部および非癌部)を用いた遺伝子発現解析を行った。癌部でのPRAME陽性例では臨床病期IV期、AFP高値、PIVKA-II高値、腫瘍多発、TMN分類の腫瘍因子T4症例、短期間での再発例を有意に多く含んでいたことから、陽性例では癌悪性度が高くなっていることが明らかになった。また非癌部でのPRAME陽性例では手術後の再発率が高く、生存期間が短いことが明らかになった。複数の肝細胞癌株を用いてウェスタンブロットを行ったところ、PRAMEの発現は未分化型肝癌で高く、高分化型肝癌では低いことが分かった。 以上の結果から、PRAMEの発現は肝細胞癌の悪性度の指標になるほか、再発を予測するマーカーとなりえる可能性が示された。PRAMEの具体的な機能はいまだ不明だが、肝癌細胞の分化度との関連が示される結果が得られている。これらの内容をまとめ論文を投稿中である。 またレチノイン酸シグナルによる肝癌細胞の抗癌剤感受性増強効果の分子機構について研究を行い、学会発表および学術論文として発表した。
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