研究課題/領域番号 |
26830077
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
坂上 倫久 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教(特命教員) (20709266)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血管新生 / CUL3 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
CUL3はBTBドメインを持つタンパク質 (BTBP)をアダプターとし、これを介して基質と結合するため、CUL3の基質特異性は、結合するBTBPの種類によって決定される。これまで我々は、本タンパク質を血管内皮細胞で欠損させると、血管新生が強く阻害されることを見出している。そこで、血管新生過程において、CUL3と結合するBTBPを網羅的に同定出来れば、CUL3による血管新生制御の全容が解明できる。本研究では、血管内皮細胞特異的CUL3 ノックアウトマウスを用いて、血管内皮細胞におけるCUL3の時空間的役割を解明し、さらに、CUL3/BTBPパートナーシップを決定することでCUL3の機能的作用点を明らかにし、新規抗血管新生医薬の開発を目指すものである。 これまで、floxed CUL3マウスとVE-CadherinCreERT2マウスを交配し、タモキシフェン投与により血管内皮細胞特異的にCUL3を欠損させることができるコンディショナルノックアウトマウスの作成を進めてきた。現在それらのマウスについて解析中である。一方、コムギ無細胞タンパク質合成システムを用いて150種のBTBPの合成に成功しており、AlphaScreen法により、CUL3と結合するBTBPについてほぼ決定することができた。従来報告されていたものに加えて、新規CUL3結合BTBPについても同定することに成功している。今後は、血管新生時に分解される基質を決定し、血管新生特異的に形成されるCUL3複合体を決定する予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトでは、平成26年度に血管内皮細胞特異的にCUL3を欠損したマウスを作成するとともに、CUL3/BTBP結合アッセイシステムを構築することを目指していた。これまでの所、マウス交配を終え、得られた個体について解析を進めていると同時に、コムギ無細胞タンパク質合成システムによりBTBPライブラリーの作成にも既に成功している。さらに、平成27年度に予定していたCUL3との結合パートナーシップについても既に解析が完了している。従って、これまで計画した通りに研究を進めることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
CUL3が多機能性を生み出すためには、多様なBTBPを介した時空間的な基質分解メカニズムが存在する。そこで、平成27年度は、CUL3ノックダウンによって強い血管新生阻害の表現型が認められた各々の血管新生ステップに焦点を絞り、そのCUL3による血管新生制御の分子メカニズムを明らかにする。まず最初に、Flk1-GFPマウスを用いて、P4、P14、P28におけるマウス網膜からGFP陽性細胞を調整し、それぞれのステップにおいてマイクロアレイ解析を行う。この中で前項で同定したCUL3と結合能を有するBTBPに着目し、それぞれのタイムポイント特異的に高発現する、CUL3結合パートナーとしてのBTBPを決定する。次に、同定した血管新生ステップ特異的なCUL3-BTBP complexが標的とする基質をCUL3コンディショナルノックアウトマウスと質量分析計を用いた方法で同定する。さらに、同定した基質とBTBPの結合はAlphScreen法を用いて確認する。以上の方法により、血管新生を制御するCUL3-BTB-substrate complexの全容を明らかにする。 また、樹立したCUL3-BTBPのAlphScreen相互作用アッセイシステムを用いて、個々のBTBドメインタンパク質に対する、CUL3への結合阻害剤を、低分子化合物ライブラリーを用いてスクリーニングする。これによって、血管新生それぞれのステップに特化した阻害剤が開発できる。スクリーニングした化合物については、腫瘍移植マウスモデルを用いて、その抗がん効果を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度のプロジェクトの中で、BTBPライブラリーの作成および動物交配実験は極めてスムーズに行えた。しかし、その作成マウスの解析については現在も引き続き進行中である。従って、そのマウスの解析に係る予算が未使用のままであるため、次年度使用とすることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、コンディショナルノックアウトマウスの解析に使用する。CUL3ノックアウトマウスは血管新生が強く阻害されることが予想される。そこで、免疫組織染色およびウェスタンブロット法、さらにPCR法を用いてそのノックアウト効率や、表現系の解析を進める予定にしている。
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