研究課題
(1)膵癌細胞株同所移植モデルの作成:数種類の膵癌細胞株のSMAD4の発現量をRealtime PCRを用いて測定し、 SMAD4野生型(MiaPaca2)と欠失型(BxPC3)を同定した。SMAD4野生型、欠失型、各々の膵癌細胞株をヌードマウスの皮下に1x106 cells移植し、数週間後、成長した皮下腫瘍片を摘出、細分化し、RFP発現トランスジェニックヌードマウスの膵尾部に移植した。(2) TGFβR1阻害薬によるTME変化のintravital realtime imaging:上記2種のモデルにおいて、腫瘍がヌードマウス内で成長したのを確認後、マウスにTGFβR1阻害薬を腹腔内投与する。麻酔下にマウスの膵尾部を露出し、投薬前から投薬後6週間まで1週間毎に腫瘍径を測定した。また共焦点レーザー顕微鏡を用い、腫瘍内部のTMEの変化を観察した。その結果、SMAD4欠失型(BxPC3)の方が野生型(MiaPaca2)と比較し有意に間質の面積が広く、SMAD4欠失型(BxPC3)腫瘍の担癌マウスにTGFβR1阻害薬を腹腔内投与すると、Vehicleと比較し腫瘍径は有意に増大したが、腫瘍内の間質量は有意に低下した(未発表データ)。(3) SMAD4野生型、欠失型膵癌のTMEにおける発現蛋白の網羅的解析:膵切除検体から凍結切片を作成し、免疫染色にてSMAD4の発現レベルを確認し、LMDにて間質部分のみをサンプリングした。さらにLMDサンプルから蛋白を抽出し、液体クロマトグラフィーにて抽出蛋白を分離、質量分析器にて発現蛋白を同定、定量(LC FT-LTQ MS)し、1500以上の蛋白を同定した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、膵癌細胞株の中からSMAD4野生型(MiaPaca2)と欠失型(BxPC3)を同定し、SMAD4野生型、欠失型、各々のFluorescent-stroma modelモデルを作成した。さらに、上記2種のモデルにおいて、腫瘍内の間質量を測定したところ、SMAD4欠失型(BxPC3)の方が野生型(MiaPaca2)と比較し有意に間質の面積が広かった。次にSMAD4欠失型(BxPC3)腫瘍の担癌マウスにTGFβR1阻害薬を腹腔内投与すると、Vehicleと比較し腫瘍径は有意に増大したが、腫瘍内の間質量は有意に低下するという興味深い結果を得た。また、LMDサンプルから蛋白を抽出し、液体クロマトグラフィーにて抽出蛋白を分離、質量分析器にて発現蛋白を同定、定量(LC FT-LTQ MS)し、1500以上の蛋白を同定した。以上の結果から概ね予定通りに研究が進んでいると判断した。
昨年度は細胞株のFluorescent-stromaモデルを用いた実験を主に行った。今後はSMAD4野生型、欠失型、各々のFluorescent-PDXモデルを用いて、腫瘍内の間質量の比較やTGFβR1阻害薬投与による腫瘍径や間質量の変化を同様に測定していく予定である。また、プロテオーム解析により同定された分子群をネットワーク解析ソフト(KMデータ)を用い、シグナル別に整理し、TME関連候補分子を同定する。
継代中であったSMAD4欠失型Fluorescent-PDXモデルが感染し使用不能となったため、Fluorescent-PDXモデルを用いた動物実験が施行できなかったため。また、蛍光色素(DyLite® 650)を投与し、TMEの変化とDrug deliveryへの影響について共焦点レーザー顕微鏡を用いてintravital realtime imagingすることにより観察する予定であったが、650nm用の励起光を発するレーザーのGeneratorが故障し、観察不能となり、実験が一時中断したため。
新たにSMAD4欠失型のFluorescent-PDXモデルを作成できたので、それを用いて腫瘍内の間質量の比較やTGFβR1阻害薬投与による腫瘍径や間質量の変化を同様に測定していく予定である。また、蛍光色素(DyLite® 650)に代わりにAlexa405を用いてTMEの変化のDrug deliveryへの影響について共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件)
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