研究課題
Fluorescent-PDXモデルの作成。SMAD4野生型、欠失型、各々の膵癌患者から摘出された癌組織の一部を摘出後可及的速やかに免疫不全マウス(Nude mouse)の皮下に移植した。数週間後、成長した皮下腫瘍片を摘出、細分化し、RFP発現トランスジェニックヌードマウスの膵尾部に移植し、SMAD4野生型、欠失型、各々のFluorescent-PDXモデルを樹立した。上記のように昨年度樹立した欠失型Fluorescent-PDXが継代中に感染し、使用不能となったため、今年度に再度別の患者検体を用い樹立した。TGFβR1阻害薬(SB-43154)によるTME変化のintravital realtime imaging。上記2種のモデルにおいて、腫瘍がヌードマウス内で成長したのを確認後、マウスにTGFβR1阻害薬を腹腔内投与する。麻酔下にマウスの膵尾部を露出し、投薬前から投薬後6週間まで1週間毎に腫瘍径を測定した。また共焦点レーザー顕微鏡を用い、腫瘍内部のTMEの変化を観察した。その結果、SMAD4欠失型(BxPC3)の方が野生型(MiaPaca2)と比較し有意に間質の面積が広く、SMAD4欠失型(BxPC3)腫瘍の担癌マウスにTGFβR1阻害薬を腹腔内投与すると、Vehicleと比較し腫瘍径は有意に増大したが、腫瘍内の間質量は有意に低下した(AACR2016にて発表予定)。TGFβR1阻害薬とゲムシタビンの併用療法。SMAD4欠失型(BxPC3)腫瘍に対しTGFβR1阻害薬とゲムシタビンの併用療法の有用性を検討した。①Vehicle、②ゲムシタビン単独、③TGFβR1阻害薬単独、④併用療法の4グループを準備し治療効果を検討したところ、他の群と比較し、併用療法群において有意に腫瘍縮小効果を認めた。また、併用群では腫瘍組織はほぼ壊死しており、病理学的にも非常に高い効果が認められた(AACR2016にて発表予定)。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、SMAD4欠失型(BxPC3)腫瘍の担癌マウスにTGFβR1阻害薬を腹腔内投与し、腫瘍内間質量の変化を観察した。TGFβR1阻害薬群では、Vehicleと比較し腫瘍径は増大したが、腫瘍内の間質量は有意に低下するという知見を得た。また、SMAD4欠失型(BxPC3)腫瘍に対するTGFβR1阻害薬とゲムシタビンの併用療法の有用性を検討し、併用療法群において有意な腫瘍縮小効果だけでなく、病理学的にも高い治療効果を認め、膵癌に対してTGFβR1阻害薬とゲムシタビンの併用療法が非常に有効である可能性があるという示唆に富む発見をした。以上の結果から概ね予定通りに研究が進んでいると判断した。
昨年度は細胞株のFluorescent-stromaモデルを用いた実験を主に行った。今後はSMAD4野生型、欠失型、各々のFluorescent-PDXモデルを用いて、腫瘍内の間質量の比較やTGFβR1阻害薬投与による腫瘍径や間質量の変化、ゲムシタビンとの併用療法の有用性についても同様に検討していく予定である。また、プロテオーム解析により同定された分子群をネットワーク解析ソフト(KMデータ)を用い、シグナル別に整理し、TME関連候補分子を同定する。
継代中であったSMAD4欠失型Fluorescent-PDXモデルが感染し使用不能となったため、別の患者検体を用いて再樹立するのに時間を要し、Fluorescent-PDXモデルを用いた動物実験が施行できなかったため。
新たにSMAD4欠失型のFluorescent-PDXモデルを作成できたので、それを用いて腫瘍内の間質量の比較やTGFβR1阻害薬投与による腫瘍径や間質量の変化、ゲムシタビンとの併用療法の有用性についても同様に検討していく予定である。また、プロテオーム解析により同定された分子群をネットワーク解析ソフト(KMデータ)にて分析し、シグナル別に整理し、TME関連候補分子を同定して行く予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 10件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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