研究課題
神経膠芽腫は治癒困難な脳腫瘍である。その難治性の原因として、腫瘍内に少数存在して、治療抵抗性を持ち、再発の起源となる脳腫瘍幹細胞が挙げられている。しかし、現在も脳腫瘍幹細胞の治療抵抗性を克服する有効な治療法は開発されていない。申請者らは以前に、人工がん幹細胞の作成技術を利用して、脳腫瘍幹細胞がIGF1-FoxO3aシグナルを介して放射線抵抗性を獲得することを解明している。本研究では、以前に確立した脳腫瘍幹細胞モデル細胞を利用して、IGF1の下流で性質変化に関与している分子メカニズムの詳細を解明する。これより、再発原因となる治療抵抗性脳腫瘍幹細胞を同定するマーカーの確立と、その抵抗性機序を阻害する新規治療開発を目指している。今年度の研究成果を以下に列記する。1、Dox誘導IGF1発現脳腫瘍幹細胞の樹立:IGF1刺激後のシグナル経路の活性化をダイナミックに解析するために、IGF1コンディショニング発現誘導システムを作成し、脳腫瘍幹細胞モデル細胞に導入した。2、マイクロアレイ解析:コントロール脳腫瘍幹細胞とIGF1高発現脳腫瘍幹細胞を利用して、IGF1発現が亢進した脳腫瘍幹細胞において発現が変化している下流分子の同定を行った。有意な発現変化のある遺伝子227個を同定した。さらに、治療抵抗性腫瘍細胞において重要な生物学的遺伝子群は何かをGene set enrichment analysisで解析した。この結果では、IGF1高発現脳腫瘍幹細胞では、幹細胞特性と細胞接着に関わるものが亢進していた。IGF1下流での細胞接着に関するシグナルに注目することとした。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたDox誘導IGF1発現脳腫瘍幹細胞の樹立を予定通り行うことができた。また、マイクロアレイ解析から今後のターゲットとなる分子を同定することに成功した。予定通りに進展していると考える。
マイクロアレイ解析から同定に成功した分子に注目して研究を進めていく、特に細胞接着に関する分子の変化に注目する。Dox誘導でIGF1の発現量を変えた後に、実際に蛋白発現量が変化している分子がどれかの確認を行い、その分子がIGF1の下流で治療抵抗性にどのように寄与しているのかの分子メカニズムを解明する。
当初の計画より経費の節約ができたため。
次年度で使用する抗体の購入費用とする。
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