研究課題/領域番号 |
26830085
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
藤兼 亮輔 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (20581713)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミスマッチ修復 / アルキル化剤 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
O6-メチルグアニンによりミスマッチ修復(MMR)因子が積極的にアポトーシスを誘導するメカニズムを解明するため、アルキル化剤であるメチルニトロソウレア(MNU)に依存して形成されるMMR因子複合体の精製を試みた。 計画書に記載の通り、ミスマッチ認識複合体MutSaのサブユニットであるMSH2、またはMSH6とビオチンリガーゼBirAの融合タンパク質を発現するためのプラスミドを作成した。BirA融合タンパク質はMSH2とMSH6のそれぞれのN末端またはC末端にBirAが融合したものを作成した。これらのプラスミドをHeLa MR細胞に導入してBirA融合タンパク質の安定発現株を樹立した。この株をMNUで処理し、O6-メチルグアニン依存的にMutSaと相互作用する因子をビオチン-ストレプトアビジンのアフィニティーを利用して精製した。この実験系が機能しているかどうかを確認するため、アフィニティー精製したタンパク質をポリアクリルアミド電気泳動に供し、既知のMMR因子に対する抗体を用いてウエスタンブロットを行った。その結果、これまでに報告されたMMR因子はBirA融合タンパク質によってビオチン化され精製されており、BirAと融合したMSH2、またはMSH6は細胞内でMMR因子と結合していることを確認した。一方で、アフィニティー精製されるMMR因子の量が通常の免疫沈降実験などと比べ少ないことがわかった。このことを精査するため、BirA融合MSH2/MSH6の細胞内局在を確認した所、MSH2/MSH6はBirAと融合したために核への移行が抑制されており、O6-メチルグアニン依存的なクロマチンへの集積が少なくなっていることがわかった。この問題を解消するため、核移行を妨げない融合タンパク質の設計、他のMMR因子であるMLH1、PMS2とBirAの融合タンパク質の発現系の構築を試みている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BirA融合MSH2/MSH6タンパク質が他のMMR因子と結合できることを確認したが、予想に反してポジティブコントロールとなるMMR因子がアフィニティー精製で少量しか精製されないことがわかった。この原因を調べた所、O6-メチルグアニン依存的なクロマチンへの集積が抑制されていることがわかった。これはMSH2/MSH6とBirAが融合したために核移行が阻害されていると予想された。このため、融合タンパク質の発現コンストラクトの再設計を余儀なくされた。そのため核移行を妨げない融合タンパク質の設計と発現系の構築、他のMMR因子であるMLH1、PMS2とBirAの融合タンパク質の発現系の構築を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析からBirA融合MSH2/MSH6の核移行が抑制されていることがわかったため、融合部分にリンカーを持たせたり、核移行シグナルを付加するなど、核移行を妨げない融合タンパク質の設計と発現系を構築する。また、他のMMR因子であるMLH1、PMS2とBirAの融合タンパク質の発現系の構築を試みてO6-メチルグアニン依存的に作られるMMR複合体の精製を行う。細胞内での構築がうまくいかない場合は、これらの融合タンパク質を発現した細胞から細胞抽出液を用意し、in vitroでMMR複合体を再構成させ、同様にして複合体の精製を試みる。In vivo、in vitroのいずれの場合もO6-メチルグアニンあり、なしで比較して新規相互作用因子を同定・解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況に遅れが生じたため、質量分析等に計上した予算が使われなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通り、新規因子の同定のための質量分析に使用する。
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