アルキル化剤によって生じたO6メチルグアニン(O6meG)に誘導されるアポトーシスにはミスマッチ修復(MMR)因子と種々の細胞周期チェックポイントタンパク質の関与が示されているが、その詳細な分子機構は明らかでない。このアポトーシス誘導の制御機構の詳細を解明するため、O6meG/T誤対合に結合したMMRタンパク質複合体と相互作用する、もしくは近傍で働く新規アポトーシス関連因子の同定を試みた。 新規アポトーシス関連因子の精製にはBioID法を用いた。BioID法では、近傍のタンパク質を非選択的にビオチン化する大腸菌BirAの変異体とMMRタンパク質の融合タンパク質を細胞内で発現させ、O6meG/T誤対合に結合したMMRタンパク質と相互作用する、もしくは近傍で働くタンパク質をビオチン化し、それらをビオチン-ストレプトアビジンの強力な親和性を利用して精製して質量分析にて解析する。本研究ではMMR複合体のうちMLH1のN末端にBirAを融合したタンパク質を用いた。この融合タンパク質がMMR複合体形成とDNA損傷応答、アポトーシス誘導において野生型MLH1と同程度に働くことができることを確認した。MLH1-BirA融合タンパク質を発現する細胞をアルキル化剤MNUで処理しビオチンでラベルした。ビオチンラベルされたタンパク質をストレプトアビジン磁気ビーズを用いて精製し、SDS-PAGEで分離の後、銀染色にて可視化した。これらのタンパク質をLC-MS/MSにて解析して同定した。同定したタンパク質のうち、特異性が高く、MNU処理に依存して増加が見られる15種類を選択し、siRNAを用いてその遺伝子をノックダウンし、それらがアルキル化剤に応答したアポトーシスに関与するかどうかを検討した。その結果、3つの遺伝子を新規アポトーシス関連因子として同定することに成功した。
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