研究課題/領域番号 |
26830087
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
井根 省二 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (80573683)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ATL |
研究実績の概要 |
ATLの発症に関与するシグナル伝達系あるいはがん関連遺伝子を同定するため、NOGマウスにおける腫瘍形成能を指標にATL由来樹立細胞株を分画した。その結果細胞数10個から腫瘍を形成する高造腫瘍能細胞集団を分画することができた。この細胞集団ではNFkBおよびAKTシグナル伝達系が異常亢進している事がレポーターアッセイ、ウェスタンブロット解析により示された。AKTの恒常的活性化変異体を導入した細胞では造腫瘍能が亢進し、逆にAKTの特異的阻害剤MK-2206の投与により腫瘍形成が抑制された事から、造腫瘍能にAKTシグナルが関与している事が強く示唆された。また網羅的遺伝子解析から、AKTシグナルを抑制する事が知られているPIK3IP1とINPP5Dの発現が高造腫瘍能細胞集団で低下している事が明らかになり、さらにこれらの遺伝子をsiRNAによりノックダウンするとAKTシグナルが活性化される事が示された。以上の結果から、分画した高造腫瘍能細胞集団ではPIK3IP1とINPP5Dの発現低下によりAKTシグナルが活性化し、これにより造腫瘍能が亢進しているものと予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究から、ATL由来細胞の造腫瘍能/悪性形質にAKTシグナル伝達系の亢進が重要である事、亢進の原因として2つの遺伝子、PIK3IP1とINPP5Dの発現低下が関与している可能性がある事、を示すデータが得られた。今後この2つの遺伝子を対象に、ATLの悪性形質転換機構解明を進めることが可能であり、また臨床応用研究展開のための足がかりが得られたものと考えている。一方でライブラリースクリーニングによる新規悪性化関連遺伝子の同定に関しては十分な結果を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
AKTシグナル活性化に関与することが示された2つの遺伝子に関して、 1)発現調節機構を明らかにする。 2)臨床サンプルでの発現レベルを検討する。 ATL関連がん遺伝子のスクリーニングに関しては、 3)CRISPR/Cas9システムを応用したスクリーニング系の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ライブラリースクリーニングによるATL悪性化関連遺伝子の同定に関しては十分な結果を得ることができていない。これにより、以降の性状解析実験を実施できていないため、次年度への繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
CRISPR/Cas9システムを応用したスクリーニング系の構築に使用し、またこの系でスクリーニングできた新規がん遺伝子の解析にも使用する。
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