研究課題/領域番号 |
26830091
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
梶野 リエ 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 研究員 (20633184)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大腸がん / 免疫学 |
研究実績の概要 |
近年、自然免疫応答の調節に神経系が関与することが明らかになってきた。また、慢性炎症は発がんの要因であり、がんの発生・進展における免疫系の関与を示唆している。これらのことから、「免疫-神経-がん細胞が相互作用してがんの成長を調節している」可能性が考えられる。本研究は、大腸がんマウスモデルであるApcΔ716変異マウスを用いて、免疫-神経-がん細胞間の調節に関わる因子を同定するとともに、これまでの知見や研究から関与が予測されるGPCRsとneuropeptidesについて解析し、大腸がんの発生・進展における免疫-神経系の関与について検討することを目的としている。 Apc変異マウスを用いた解析については、MyD88FL/FL;Apc;Villin-CreER複合変異マウスを作出した。タモキシフェン投与により腸上皮特異的にMyD88欠失を誘導した場合、自然免疫応答が低下すると考えられる。8週齢のマウスでMyD88の欠失を誘導したところ、非投与群と比較して腫瘍数の減少傾向がみられ、それに伴い脾腫の改善もみられた。腫瘍の形成状態や変化について組織学的解析を進めている。 GPCRsとneuropeptidesの解析については、解析候補因子の一つとしてneuropeptide Y(NPY)が挙げられた。そこで、リアルタイムPCR法により遺伝子発現を調べたところ、Apc変異マウスの回腸腫瘍部位におけるNPY の発現増加がみられ、また、NPY受容体の発現変動も認められた。さらに、免疫組織染色法によりNPYの局在部位を調べたところ、神経叢および腫瘍間質特異的な染色像が得られ、腫瘍間質におけるNPYの発現が腫瘍の成長に影響することが期待された。しかしながら、公共データベースで得られるヒト大腸がん組織遺伝子発現データセットを用いてNPYとNPY受容体の発現を調べたところ、両者の大腸がんへの寄与は少ないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ApcΔ716変異マウスの回腸腫瘍部位を用いたマイクロアレイ解析により、がんの発生・進展に関与することが期待されるneuropeptidesの一つとして、neuropeptide Y(NPY)が挙げられたので、NPYの解析を進めた。リアルタイムPCR法により遺伝子発現を調べたところ、Apc変異マウスの回腸腫瘍部位におけるNPY の発現増加およびNPY受容体の発現変動が認められた。さらに、免疫組織染色法によりNPYの腸管組織における局在部位が神経叢および腫瘍間質特異的であることが明らかになり、腫瘍間質におけるNPYの発現が腫瘍の成長に影響することが期待された。しかしながら、公共データベースで得られるヒト大腸がん組織遺伝子発現データセットを用いてNPYとNPY受容体の発現を調べたところ、両者の大腸がん発生・進展への寄与は少ないことが示唆された。そこで、現在は、マイクロアレイ解析より得られた他の候補因子についての検討を進めることにしたため、neuropeptidesとGPCRsに関する研究が当初の計画より少し遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
MyD88FL/FL;ApcΔ716;Villin-CreER複合変異マウスを用いた解析については、当初の計画通り、腫瘍の形成状態や変化について組織学的解析を進める。腫瘍間質に存在する細胞種の変化等を検討することに加え、Nuerofilament Light抗体を用いて可視化した神経細胞の腸管組織における局在についても着目する。また、腸管免疫機能には腸内細菌も影響することから、腸管組織への細菌の侵入状態についても菌体内のrRNAを標的としたFISH法により検討する。 GPCRsとneuropeptidesの解析については、ApcΔ716変異マウスの回腸腫瘍部位を用いたマイクロアレイ解析において発現変動していた因子がNPY以外に40個以上ある。がんの発生・進展に関与することが期待されるこれらGPCRsとneuropeptidesの解析に着手する。Apc変異マウスの回腸腫瘍部位および、ヒト大腸がん組織遺伝子発現データセットのいずれにおいても発現が変動している因子を絞り込む。その後、免疫組織染色が可能な因子については、Apc変異マウスの腫瘍における局在部位を同定し、どのような細胞種において発現しているのか特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画通りに進行せず、進捗が若干遅れている研究があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の研究の推進方策にしたがって行う研究において、使用する予定である。Apc変異マウスを用いた解析については当初の使用計画通りであるが、GPCRsとneuropeptidesの解析については新たに解析する因子が生じたため、次年度使用額をこれにあてる予定である。
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