研究課題
乳癌の代表的な分子標的であるエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)をいずれも発現しないトリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、有効な標的治療が無く同時に悪性度が高く予後不良である。わが国の乳癌罹患率・死亡率は上昇し続け、特に罹患率は過去約20年間女性のがん第1位であり、現在年間90000人が罹患している。そのなかでTNBCは約20%を占めており社会的に無視できない集団となっている。TNBCの予後改善のためには現在の薬物治療の最適化と責任標的の解明が重要である。そのなかで我々は腫瘍免疫学的なアプローチからTNBCにおける現在の薬物治療の最適化を図った。TNBCのおいては術前化学療法施行後に腫瘍が遺残したnon-pCR症例は、消失したpCR症例と比較し予後不良であることが知られている。しかしその予後は一様ではなく、non-pCR症例のなかでも層別化が必要である。我々は実際にヒト乳癌組織を用いて、薬物治療後の腫瘍組織において活性化された細胞障害性T細胞(CD8+)高値例、またはCD8と制御性T細胞(FOXP3+)の割合高値例で予後良好であることを報告した(Miyashita M et al. Breast Cancer Res 2015)。また、治療前に比べて治療後でCD8+またはCD8+/FOXP3+の値が上昇した症例はnon-pCRであっても予後良好であることを報告した。これらの結果から、TNBCの予後を改善すべく新たに標的とする対象として、術前化学療法後のnon-pCR症例かつ抗腫瘍免疫能が低下した集団が、新規標的治療、特に免疫チェックポイント阻害剤の適した対象と考えられる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
European Radiology
巻: 26(2) ページ: 331-339
10.1007/s00330-015-3847-4
Breast Cancer Res Treat
巻: 155(1) ページ: 65-75
10.1007/s10549-015-3668-9
巻: 156(1) ページ: 45-55
10.1007/s10549-016-3739-6
Breast Cancer Research
巻: 17(1) ページ: 124-136
10.1186/s13058-015-0632-x