研究課題/領域番号 |
26830098
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
坂井 和子 近畿大学, 医学部, 助教 (20580559)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 次世代シーケンサー / セルフリーDNA / 肺がん / 体細胞遺伝子変異 / 血しょう |
研究実績の概要 |
がん患者の血しょう中には、がん細胞由来の循環細胞フリーDNA(セルフリーDNA)が存在することが知られており、侵襲的ながん組織の採取に代わって非侵襲的な検査の材料として用いることができる。次世代シーケンサーは、一定の検出感度が担保され、かつ、簡便に遺伝子異常を検出可能なシステムを有する機器であり、本研究では次世代シーケンサーを用いたセルフリーDNAからの体細胞遺伝子変異測定系の有用性を示すことを目的とする。本年度は、次世代シーケンサーを用いた非侵襲的に採取し得る末梢血からの血しょう検体から体細胞変異検出系の構築に取り組んだ。倫理委員会での研究計画の承認のもと、血しょう中のセルフリーDNAからの体細胞遺伝子変異の検出系の構築に大腸がん患者の血しょうを用い、大腸がんで主要な遺伝子変異であるKRAS、NRAS、BRAFの3遺伝子の遺伝子変異の検出アルゴリズムおよび検出感度について検討した。構築した検出アルゴリズムによる100例の腫瘍組織検体での検出結果を標準法と比較した結果、90%の高い一意率を得た。同検出法でのセルフリーDNAでの検出結果をペアの組織検体と比較した結果、5/7(71%)の一致率を得た。本検討から、次世代シーケンサーでのセルフリーDNAからの検出が可能と判断し、肺がん患者でのセルフリーDNAでの検討に取り組んだ。肺がんでは、EGFR遺伝子変異を含む22遺伝子を対象とする検出系の構築に取り組み、大腸がん検体での検討結果に基づいて、血しょう中からのセルフリーDNAの抽出条件を含む測定条件および検出アルゴリズムを確定した。また、次年度以降の臨床検体を用いた測定計画のための倫理委員会での研究計画の承認を取得し、次年度での測定実施の準備を完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、次世代シーケンサーを用いた血しょうセルフリーDNAからの遺伝子変異の検出系の構築を行い、次年度での臨床検体での測定へ遅延なく取り掛かることである。検出系の構築に関して、①血しょう検体からの遊離核酸の抽出条件、②変異部位のPCRによる増幅条件、③高感度を達成するための検出アルゴリズムと必要coverage数検討を行い、測定条件を最適化した。検出感度については、0.3%を目標としたが現状では約1%程度となった。本手法にて検出された遺伝子変異は、別法での確認を行っている。 検出系構築に伴い、必要とされた臨床検体の使用に関しては、近畿大学医学部での倫理委員会の承認を得て行っている。また、次年度に、肺がんでの血清検体と腫瘍組織検体での測定結果との比較検討を予定しているが、そのために協力を仰ぐ東京医科大学での倫理委員会承認、当大学医学部での倫理委員会での承認も取得済みである。 以上より、本研究は概ね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に記載の予定通り、血しょう検体と腫瘍組織検体のペア検体での次世代シーケンサーによる体細胞遺伝子変異の測定を行い、検出された遺伝子変異の比較検討を行う。研究実績の概要に記載した通り、次年度に実施予定の臨床検体を用いた測定に関する東京医科大学(協力施設)ならびに近畿大学で医学部での倫理委員会の承認は取得済みであり、検体の送付も進めており、速やかに測定実施が可能な状況にある。現行の検出アルゴリズムは、約1%の感度で設定されているが、ペア検体での測定結果に基づいて、感度および特異度の観点から、変異検出のカットオフ値の再設定を試みる。また、血しょうセルフリーDNAからの遺伝子変異検出結果と治療効果、予後との相関解析を行う。
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