研究課題
がん患者の血しょう中には、がん細胞由来の循環細胞フリーDNA(セルフリーDNA)が存在することが知られており、侵襲的ながん組織の採取に代わって非侵襲的な検査の材料として用いることができる。次世代シーケンサーは、一定の検出感度が担保され、かつ、簡便に遺伝子異常を検出可能なシステムを有する機器であり、本研究では次世代シーケンサーを用いたセルフリーDNAからの体細胞遺伝子変異測定系の有用性を示すことを目的とする。本年度は、次世代シーケンサーを用いた非侵襲的に採取し得る末梢血からの血しょう検体から体細胞変異検出を試みた。倫理委員会での研究計画の承認のもと、H26年度に構築した測定系を用い大腸がん臨床検体でのKRAS, NRAS, BRAF遺伝子変異の解析を行った。遺伝子変異の検出率は、標準法と比べて92%の高い一致率を得た。また高感度検出法であるデジタルPCR法との比較においても90%の一致率を得た。さらに、肺癌における次世代シーケンサーを用いた遺伝子変異検出を目的として、肺癌に特徴的な22の遺伝子のホットスポット部位をカバーする遺伝子変異検出パネルを用い、遺伝子変異検出アルゴリズムを構築した。倫理委員会での研究計画の承認のもと、肺癌患者血漿検体から抽出したセルフリーDNAを用いて検出を試みた結果、EGFR遺伝子変異を含む複数の遺伝子変異を検出した。検出された遺伝子変異は、高感度検出法であるデジタルPCR法と73%の一致率を示した。以上の結果から、次世代シーケンサーを用いたマルチプレックス測定による遺伝子変異検出は、従来の高感度手法と比して同等の検出力を示すことが示唆された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
PLoS One
巻: 10 ページ: e0121891
10.1371/journal.pone.0121891