研究課題/領域番号 |
26830099
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
倉田 洋一 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70645564)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロテオミクス / がん / 抗がん剤抵抗性 / 受容体型チロシンキナーゼ / 分子標的薬 / ハウスキーピングタンパク質 |
研究実績の概要 |
HER2陽性乳がんをはじめ、多くのがん種では受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の発現増加・活性化がおこり、細胞増殖や抗アポトーシス作用が促進される。RTK分子標的薬抵抗性がん細胞ではRTKおよび下流のシグナル伝達経路が再活性化するため、これらをモニタリングすることができれば、RTK分子標的薬の抵抗性あるいは奏功状態やその持続を判定することができるバイオマーカーとなりうるが、シグナル伝達系タンパク質のリン酸化状態は試料の保存方法等の影響を受け易いという問題がある。本研究ではRTKシグナル伝達系の活性化状態を反映するバイオマーカー候補を、乳がんやその他のがん種における抗がん剤抵抗性や術後予後と連動して発現変動するハウスキーピングタンパク質を、既報オミクス解析データからin silico解析で選抜し、三連四重極型質量分析計を用いたMRM (Multiple Reaction Monitoring) 定量解析等で特定する。特定したタンパク質による1)RTKシグナル伝達系モニタリングシステムの構築及び2) 特異的抗体によるトラスツズマブや他RTK分子標的薬抵抗性判定検査法の実現につながる基礎的知見を整備することを本研究の目的とする。乳がんに比べオミクス解析データが比較的少ない消化管間質腫瘍のオミクスデータを用い、RTK分子標的薬イマチニブ耐性に獲得に伴うMAPKシグナル活性化と同調して発現変動するハウスキーピングタンパク質群を前年度見出した。今年度はこれらのタンパク質の一部はTGFβシグナルが活性化し、術後予後不良となる肺腺がん患者組織でも類似の発現変動を確認することができた。これらのタンパク質の発現変動はがん種を越えてRTKの活性化や発現増加と連動する可能性が示唆されたので、最終年度はトラスツズマブ抵抗性乳がんで解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳がんに比べオミクスデータが比較的少ない消化管間質腫瘍のオミクス解析データを用いクラスター解析やGSEA等のin silico解析を行い、RTK分子標的薬抵抗性で活性化するシグナル伝達系およびそれと同調して発現が変動するハウスキーピングタンパク質数種類を前年度明らかにした。これらのタンパク質の一部が、RTKシグナルが活性化した肺腺がん患者組織でも類似の発現変動をしていたことは非常に興味深い実験結果であったものの、トラスツズマブ抵抗性乳がんでの研究で同様の結果が出るのか、早急に検証実験を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
①消化管間質腫瘍および肺腺がんのRTKの活性化や発現増加と連動して発現変動したハウスキーピングタンパク質がトラスツズマブ抵抗性乳がんで同様の発現挙動を示すか、MRM解析またはウエスタンブロット、免疫組織化学染色等で検証を行う。 ②消化管間質腫瘍に関しても上記タンパク質や関連タンパク質がRTK分子標的薬抵抗性を判定するバイオマーカーになりうるか同様に検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
質量分析装置の故障が長期化したため、研究実施計画に盛り込んだ、トラスツズマブ抵抗性乳がんを用いたMRM定量解析によるバイオマーカーの検証実験が実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養試薬、データ解析用ソフト、抗体、MRM測定用試薬、カラムなどの物品費を中心に、学会参加等の旅費、論文校閲等人件費を使用予定である。
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