研究課題/領域番号 |
26830100
|
研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
中尾 香菜子 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (30583059)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 癌 / 腫瘍マーカー / CEA / スプライスバリアント / アイソフォーム |
研究実績の概要 |
初年度となる平成26年度は、野生型CEAおよび2種類のCEA isoformそれぞれを特異的に認識する抗体の作製とそれぞれを個々に発現する安定発現株の樹立を行った。2種類のCEA isoformのアミノ酸配列は、野生型CEAと共通する部分がほとんどであるが、一部異なる部分も存在する。Isoform 5Dは、NドメインのC末側からA2ドメインのN末にかけて、Isoform 3Dは、A1ドメインのC末側からB3ドメインのN末にかけての一部に特異的な配列を有する。そこで、その領域にエピトープをデザインし、isoformを特異的に認識する抗体作製のための抗原ペプチドの合成を行った。合成した抗原ペプチドを用いて、2種類のCEA isoform特異的な抗体の作製を外注した。 また、CEAの野生型および2種類のisoformを個々に発現する安定発現株の樹立を行った。CEAを発現する培養がん細胞のほとんどが、野生型とisoformsのすべてを発現する。そこで、培養がん細胞に発現するCEAsを鋳型として、野生型およびisoformのCEAのクローニングを行い、ヒト細胞発現ベクターに挿入した。 CEAを遺伝子導入する培養細胞として、内因性CEAを発現しないHEK293細胞を用いた。CEAの野生型および2種類のisoformの一過性発現株および安定発現株を作製し、すべてを認識する市販の抗体を用いて、その発現様式を検証した。同時にLC-MS/MS解析を行うことで、アミノ酸配列からそれぞれの発現の確認も行った。 作製したCEA野生型およびCEA isoform安定発現株を用いて、特異的な抗体の評価を次年度以降行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌胎児性抗原CEAは代表的な腫瘍マーカーの1つであるが、早期癌での検出が難しく、またその臓器特異性が低いなどその問題点も数多くあげられる。申請者はCEAとCEA関連細胞接着分子群に着目した研究を行ってきた。その中でCEAの新規アイソフォームを同定し、野生型CEA同様に培養上清中へと分泌されていることを見出した。本研究では、CEA検出における野生型とアイソフォームの差別化により、CEAの臓器特異性を上昇させる等の腫瘍マーカーとしての有用性の向上をその最終目的として研究を行っている。当該年度は、①抗原ペプチドのデザインとCEAアイソフォーム特異的な抗体の作製、②個々のCEAの安定発現株の樹立を行った。これらの項目については、当初の計画通りにすすんでおり、次年度の検出系の構築に順調に進むことができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、作製した抗体および野生型CEA、CEA isoform安定発現株を用いて、それぞれを特異的に検出する系の確立を行っていく予定である。さらに、構築した検出系を用いて、複数の臓器由来の培養がん細胞を用いて、野生型およびisoformの発現量・分泌量の比較を行うと同時に、CEA isoformの機能への影響も検証する予定である。また、他のCEA関連分子の発現レベルの変化や分子型の変化についても同時に検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、旅費分の使用を予定していたが、その分の金額が未使用であったこと、また抗体作製関連費やたんぱく質発現解析試薬等において、一部予定金額よりも使用が少なかったことで、当該助成金が生じたと考えている。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品請求に関して、前年度に引き続き細胞培養用試薬やプラスチック器具等予定通り行う予定であるが、作製した抗体を用いた検出系の構築を行うため、特にたんぱく質発現解析試薬に関して随時請求していく予定である。
|