研究課題
ERKパスウエイを阻害することを目的に、KRAS変異肺がん細胞株に対しMEK阻害薬を添加した。MEK阻害薬はERKシグナルを一時的に遮断していたが、24時間後には再活性化を認めた。また、MEK阻害薬の投与によりPI3Kシグナルの活性化上昇も認められた。この結果は、MEK阻害薬が何らかのフィードバック機構を誘導し、PI3K、ERKシグナルの活性化を行うことを示唆していた。このフィードバック機構の解明がKRAS変異腫瘍におけるPI3K,ERKシグナルの制御につながると考え、そのメカニズムについて検討した。その結果、ERBB3タンパクとFGFR1タンパクがフィードバック機構に関与していることが示された。ERBB3とFGFR1の関与については、がん細胞が上皮系の性質を有している際にはERBB3を介したフィードバックが行われ、間葉系の性質を有している時にはFGFR1を介したフィードバックが行われていた。間葉系の性質を示すKRAS変異肺がん細胞株に対しFGFR阻害薬とMEK阻害薬を併用したところ、ERKシグナルの完全な遮断が得られた。また、MEK阻害薬添加後に認められたPI3Kシグナルの上昇についてもFGFR阻害薬併用により消失を認めた。この結果は、本研究課題の目的であるPI3KシグナルおよびERKシグナルを標的とした治療がFGFR阻害薬とMEK阻害薬の併用療法により可能となることを示唆していた。このため間葉系の性質を示すKRAS変異肺がん細胞株について両薬剤の併用効果を確認したところ、細胞増殖の抑制とアポトーシスの誘導が認められた。今後、FGFR阻害薬とMEK阻害薬の併用療法の有効性について、マウスゼノグラフトモデル、患者腫瘍由来ゼノグラフトモデルなどを用い評価する予定である。さらに、肺がん以外のKRAS変異腫瘍についても同様の解析を進める予定である。
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