研究課題/領域番号 |
26830106
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐賀 公太郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00563389)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | センダイウイルス |
研究実績の概要 |
1、センダイウイルス(HVJ)粒子から F、HN などの膜タンパク質を分離し、それぞれを抗 F 抗体、抗 HN 抗体で免疫沈降する方法を確立した。本研究ではマクロファージ細胞株の F タンパク質認識受容体を F タンパク質との共沈によって同定することを目的としており、F タンパク質免疫沈降法は研究目的を達成するためには必要不可欠な技術である。 2、レンチウイルスベクターを利用した CRISPR-Cas9 システムによるノックアウト技術を確立した。本研究では F タンパク質認識受容体やその細胞内・細胞間シグナル伝達の関連遺伝子を同定するために、候補遺伝子を siRNA によってノックダウンしたマクロファージ細胞株と T 細胞を共培養し、その HVJ-E 刺激による IFN-γ分泌を抑制するものを検討する計画であった。しかし近年、CRISPR-Cas9 システムの開発によりノックアウト細胞の樹立が簡便化され、siRNA によるノックダウンよりも顕著な IFN-γ分泌抑制結果が予想されることから、本研究でも CRISPR-Cas9 システムの技術習得を取り入れた。 3、HVJ エンベロープ (HVJ-E) 刺激後の CD11b+ 細胞から T 細胞へのシグナル伝達としてインターロイキン (IL) -18 が関与していることを明らかにした。マウス脾細胞にHVJ-E を投与することにより IL-18 の遺伝子発現が mRNA レベルで増加し、CD11b+ マウス脾細胞でも同様に増加することを明らかにした。そこで、抗 IL-18 中和抗体や抗 IL-18 受容体中和抗体をマウス脾細胞に投与すると、HVJ-E と IL-12 の同時投与によって促進されるインターフェロン (IFN) –γ の分泌が著しく抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の初年度の計画において、マクロファージ細胞株における F タンパク質認識受容体の同定を行う予定であったが、現在のところ新規受容体同定には至っていない。しかし、新規受容体の検討方法として計画していた siRNA によるノックダウンに代わり、CRISPR-Cas9 システムによるノックアウト技術を習得した。これにより、当初の計画より鮮明な結果を得られることが予想され、受容体同定も速やかに行われると考えている。さらに、HVJ-E 刺激 CD11b+ 細胞から T 細胞への情報伝達因子として、サイトカインである IL-18 が関与していることを明らかにした。これは本研究の二年目の研究計画に挙げていたものである。 以上より、本研究は研究計画どおりには進展してはいないものの、研究を速やかに遂行するための新規技術の習得や二年目に予定していた研究が進んでいる。従って、本研究の達成度の評価を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、F タンパク質認識受容体の同定を行う。抗 F 抗体による免疫沈降法によって F タンパク質と共沈してきたマクロファージ膜タンパク質を質量分析によって同定する。質量分析によって得られた候補遺伝子に関してはレンチウイルスベクターを利用したCRISPR-Cas9 システムによってノックアウト細胞株を樹立し、HVJ-E 刺激後の反応が消失するかどうかで F タンパク質認識受容体を検討する。また、細胞内シグナル伝達経路の解明については研究計画通りに実施する。
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