本研究の最終年度の計画では、不活化センダイウイルス粒子 (HVJ-E) F タンパク質によって活性化された抗原提示細胞がどのようにして T 細胞を活性化するのかを明らかにすることを目的としている。本研究によって、HVJ-E は CD11b+ 細胞を刺激することによりサイトカインである IL-18 の発現レベルを増加させ、IL-18 が T 細胞の活性化に重要な働きを示すことを明らかにした。これまで、HVJ-E はがん組織における自然免疫と獲得免疫を活性化することにより、効果的に抗腫瘍免疫を活性化することを見出していた。HVJ-E が自然免疫を活性化する機構はすでに明らかになっていたが、どのようにして獲得免疫活性化に関与するかは不明であった。本研究成果によって、HVJ-E の示す抗腫瘍獲得免疫活性化の一部メカニズムが明らかになったと同時に、新たながん免疫療法開発の基盤となる可能性がある。 また、マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞における F タンパク質新規受容体を同定するために、マクロファージ細胞株膜画分タンパク質の溶解物と F タンパク質を混合し、抗 F タンパク質抗体によって F タンパク質を免疫沈降させた。それによって、F タンパク質と共沈してきた膜タンパク質を質量分析で同定することにより、いくつかの F タンパク質受容体の候補遺伝子を得た。まだFタンパク質の新規受容体同定には至っていないが、今後 CRISPR-Cas9 システムを利用した候補遺伝子欠損細胞を作製することで、F タンパク質新規受容体を同定する予定である。
|