本研究課題では、より効果的に抗がん作用を発揮する次世代型キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor: CAR)発現T細胞を用いた、新たながん治療法を創出することを目的としている。昨年度までに、がん抗原特異的なCARと共にT細胞の生存および遊走に関わるサイトカインとケモカインを一細胞に同時に発現させるコンストラクトを作成し(以下、次世代型CAR)、その抗がん効果を検討したところ、極めて強力な抗がん効果を発揮してがんの完全寛解を誘導すること、担がんマウスに投与後、ドナー、レシピエント、双方の免疫細胞をがん局所に集積させること、等を明らかにした。 最終年度は、次世代型CAR-T細胞により誘導される強力な抗腫瘍効果の作用機構を解明するため、以下のことを実施した。 1.次世代型CAR-T細胞投与後、がん局所に集積するレシピエントT細胞の、抗がん効果における役割を検討するため、レシピエントのT細胞に特異的な抗体を投与することでレシピエントのT細胞を除去したところ、抗がん効果は減弱した。 2.次世代型CAR-T細胞の投与後、効果的に免疫記憶が形成されているかを検討するため、寛解が誘導されたマウスに同種のがんを再接種したところ、がんの生着は認められなかった。 3.次世代型CAR-T細胞投与後にエピトープスプレッディングが誘導されるのかを検討するため、がんの寛解が認められたマウスに、同種ではあるがCARの標的が発現していないがんを接種したところ、顕著な増殖抑制が認められた。 以上のことから、次世代型CAR-T細胞は、投与後、レシピエントのT細胞と相互作用して相乗的に抗がん効果を発揮するとともに、効率的に免疫記憶を形成することでがんの再発を抑止していると考えられた。また、抗がん効果にはエピトープスプレッディングも重要な役割を果たしていることが示唆された。(現在投稿中)
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