研究課題
酸性環境は悪性腫瘍に共通して認められ、腫瘍の抗癌剤への耐性を惹起するが、腫瘍酸性環境を標的とする治療法は開発されていない。酸環境による薬剤耐性と腫瘍幹細胞性の獲得機序を解明する過程で、骨髄腫細胞でセリンスレオニンキナーゼPim-2が大きく亢進していることを見いだしていた。さらに酸性環境ではSIRT1の発現の亢進、さらに癌幹細胞を含むside population (SP)分画の薬剤排出トランスポーターBCRPの発現亢進がみられ、酸性環境形成の原因となる乳酸を排出するモノカルボン酸トランスポーター(MCT)の活性化もみられた。これらは、pim阻害薬の投与によりすべて抑制された。さらにpim阻害薬は酸性環境でより強力な抗腫瘍効果を発揮した。面白いことに、リンパ腫で頻用されているベンダムスチンという抗がん剤も酸性環境で抗腫瘍効果が増強した。さらに、これらの病態を改善に導くため、本学薬学部が保有している構造の明らかな化合物ライブラリーを探索し、酸環境下において強力な抗腫瘍活性を発揮しうる化合物を合計14種抽出した。このうち、CucurbitacinBという物質がin vitroで安定であり、酸性環境で強力に抗腫瘍効果を発揮することを見いだした。その作用機序をin vitroで検討したところ、タンパク合成の阻害作用がみられ、特にpim2の蛋白レベルを有意に低下させた。さらに、CucurbitacinBで処理した後の骨髄腫細胞ではコロニーアッセイでのコロニー形成がほとんどなくなったことから、がん幹細胞の分画にも抗腫瘍効果を及ぼしているものと推察された。さらに、マウスでin vivoで検討を行ったところ、有意に抗腫瘍効果を発揮した。以上より、pim2はがん酸性環境でcriticalな働きをしており、がん酸性環境に対する新規治療薬としてcucurbitacinBを見いだした。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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