研究課題/領域番号 |
26830109
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
朝井 洋晶 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (00726838)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞免疫療法 / 白血病性幹細胞 / WT1 |
研究実績の概要 |
白血病特異的細胞傷害性T細胞(CTL)クローン由来T細胞レセプター(TCR)遺伝子を用いた新たな遺伝子改変T細胞療法の開発目的で研究を遂行し、下記の結果が得られた。 我々がすでに樹立したWT1特異的HLA-A24拘束性CTL クローンからTCR遺伝子を単離し、その発現ベクターをタカラバイオ株式会社との共同研究によって構築した。本レトロウイルスベクターは内在性TCR発現を抑制しする新規ベクターである。末梢血T細胞に遺伝子導入したところ、TCR発現T細胞(WT1-TCR-T細胞)は元のCTLクローン同様、HLA-A24拘束性に白血病細胞を殺傷することがin vitro実験系で確認された。さらに、ヒト白血病細胞移植ヒト化マウスの実験系を用いて検討したところ、WT1-TCR-T細胞を養子免疫することによって、ヒト白血病細胞の増殖を著明に抑制した。さらに、ヒト化マウス継代実験によって、ヒト白血病幹細胞を排除できる可能性が示唆された。また、WT1-TCR発現CD4陽性T細胞の機能解析を行ったところ、WT1抗原刺激によってTh1タイプのサイトカインを産生することが示された。さらに、WT1-TCR発現CD4陽性T細胞はWT1-TCR-CD8陽性CTLの細胞傷害性を増強させ、白血病細胞へのトラフィッキングを誘導することが示された。他方、我々が樹立したAurora-A kinase特異的CTLクローンからも同様にTCRを単離し、発現レトロウイルスベクターを構築した。遺伝子導入T細胞はAurora-A kinase発現白血病細胞をHLA拘束性に殺傷した。これらの結果から、腫瘍特異的TCR遺伝子導入による免疫遺伝子治療の抗腫瘍効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、WT1特異的HLA-A24拘束性遺伝子発現レトロウイルスベクターを構築し、ヒト末梢血T細胞に遺伝子導入できた。また、WT1-TCR-T細胞がWT1特異的HLA拘束性に白血病細胞を殺傷することが証明できた。WT1-TCR発現CD4陽性T細胞の詳細な機能解析も遂行できた。さらに、ヒト白血病細胞移植免疫不全ヒト化マウスの実験系を用いて、in vivo効果も証明できた。これらの結果から、当初の目標をほぼ達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究によって、白血病特異的TCR遺伝子をヒト末梢血T細胞に遺伝子導入することによって、白血病特異的CTLを容易に作製できることが証明できた。来年度は臨床応用に向けて、さらに実験回数を増やし普遍性を検証する。さらに、抗腫瘍効果をin vivo実験系で詳細に検討する計画である。また、WT1特異的TCRをヒト造血幹細胞に遺伝子導入し、HLA-A24トランスジェニック免疫不全NSGマウスに移植して、WT1特異的HLA-A24拘束性CTLがマウス体内で分化増殖することを検証する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在の達成度の記載のとおり、ヒト白血病細胞移植免疫不全ヒト化マウスを用いたin vivoでの細胞障害性T細胞の効果も証明できたが、今年度はWT1特異的HLA-A24拘束性遺伝子発現レトロウイルスベクター作成、in vitroでの細胞障害性T細胞の機能解析が中心であったことから、予定より物品購入が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は臨床応用に向けて、さらに実験回数を増やし普遍性を検証する。さらに、抗腫瘍効果をin vivo実験系で詳細に検討する計画である。また、WT1特異的TCRをヒト造血幹細胞に遺伝子導入し、HLA-A24トランスジェニック免疫不全NSGマウスに移植して、WT1特異的HLA-A24拘束性CTLがマウス体内で分化増殖することを検証するために予算を使用する計画である。
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