研究課題/領域番号 |
26830110
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
崔 林 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 特任助教 (30717822)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 免疫系ヒト化マウス / DNAワクチン |
研究実績の概要 |
我々はTAA (マウスSART3)とアジュバント(マウスCD40LとGM-CSF)遺伝子を内包した高分子ミセル(DNAワクチン)を用いて同種担癌マウスモデルにおけるDNAワクチン実験を行った。マウス皮下腫瘍モデル及び腹膜播種モデルにおいて鼠径部皮下 (sc)・腹腔内 (ip)・尾静脈 (iv)投与の抗腫瘍効果を比較検討した。s.c.投与により皮下組織及び鼠径部リンパ節に、ip投与により腸間膜リンパ節、肝臓及び脾臓に主に高分子ミセルの分布と遺伝子発現が確認された。iv投与では明らかな臓器分布・発現を確認できなかった。マウス皮下腫瘍モデルにおいてsc投与とip投与は皮下腫瘍の増殖を有意に抑制し、腹膜播種モデルにおいてもマウスの生存期間はDNAワクチン治療により有意に延長された。ワクチン治療でCTLとNK活性は有意に亢進し、免疫染色にて治療群の腫瘍組織にCD4+/CD8a+ T細胞の浸潤が認められた。逆に、抗CD4/CD8a中和抗体を腹腔内に投与したところ、DNAワクチンにおける治療効果の消失が確認された。 臨床応用の視点からip投与は一般的治療法ではなく、sc投与はip投与に比べるともっと安全な治療法である。例えば、sc投与はip投与に比べて腹腔内の主な臓器におけるサイトカインの産生を抑えていた。これらは臨床応用においてi.p.投与のみならずs.c.投与で治療効果が期待できるこの高分子ミセル搭載DNAワクチンの有用性を示唆している。以上の研究成果はPlos oneとJournal of controlled releaseに掲載された。 既に、高分子ミセルに搭載する治療遺伝子(ヒト腫瘍関連抗原遺伝子及びヒトCD40LとGM-CSF遺伝子)の構築を終えている。担癌免疫系ヒト化マウスにおける治療実験の準備を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は本大学における動物実験申請と遺伝子組み換え実験の申請とNOD/Scid/Jak3null(NOJ) マウスの供給の申請に時間がかかり、ようやく免疫系ヒト化マウスの作成実験が行える準備が整った。次年度は計画どおり実施を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者である熊本大学の岡田教授らは免疫系ヒト化マウス作成に習熟しており、技術的なサポートは問題ない。また、熊本大学から既にNOJマウスの購入の事務的・倫理的手続きを完了した。今後、免疫系ヒト化担癌マウス作成の最適化実験を行う予定である。具体的には、ヒト膵癌/大腸癌細胞とヒト末梢血幹細胞を、それぞれ細胞数を振りながら腹腔内/皮下と脾臓内へ移植し、免疫系ヒトキメラ化の条件下で担癌状態の成立するモデルを検討する。免疫系のヒト化の検証は、脾臓細胞を単離してFACS解析で行う。腫瘍形成は肉眼所見で確認する。 免疫系ヒト化担癌マウスが作成できたらヒト遺伝子を搭載するDNAワクチンで治療効果を確認する。具体的には、腫瘍関連抗原遺伝子 (ヒトSART3等) とアジュバント遺伝子(ヒトGM-CSF+CD40L遺伝子)を搭載するDNAワクチンを鼠径部皮下と腹腔内投与を行い、皮下腫瘍モデルにおいては腫瘍サイズ、腹膜播種モデルにおいては生存率で、治療効果を確認する。治療効果の機序に関してはマウスの脾臓とリンパ節細胞を単離し、CTL及びNK活性を測定する。また、腫瘍組織への免疫細胞の浸潤を組織免疫染色にて検討する。更に液性免疫活性の評価として、腫瘍抗原に対する抗体価をELISAにて測定する。以上の評価系で、免疫系ヒト化マウスのヒトワクチン効果の評価モデルとしての有用性を検討する。
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