T-ALLは小児・思春期に好発するリンパ腫であり、約半数にNotch1変異が認められる。近年では半数近くの治癒が期待されるが、化学療法に対する耐性例など、いまだ多くの問題を抱えている。本研究ではNotch1変異を起因とするT-ALL新規治療法の開発をめざし、Notch1抑制性miRNAの探索を行った。 Notch分子は接着分子としても機能する。T-ALL細胞株MOLT-4をNotchリガンドDll4過剰発現細胞OP9-Dll4上で培養すると、コントロール群と比較して優位に接着する。そこでMOLT-4にmiRNAライブラリーを導入し、OP9-Dll4上で培養、浮遊していたMOLT-4を選択的に回収した。Notch1抑制性miRNAが導入された場合、Notchによる接着は低下すると予測したためである。同様の選択を再度行い、miRNAの同定を行った。6つの候補miRNAが得られ、内3つがNotch1の3’UTRに予測標的配列を有した。さらにその内1つの候補miRNA(miRNA-4)が、Notch1-3’UTRを融合したルシフェラーゼ発現を再現性をもって抑制した。miRNA-4をT-ALL細胞株Jurkatに導入したところ、Dll4への接着が抑制された。 Notch1はT細胞分化誘導、B細胞分化抑制に重要な役割を果たす。そこで、miRNA-4の生理的機能を検討するために骨髄移植実験を行った。C57BL/6マウスより純化したLineage陰性骨髄細胞にmiRNA-4を導入し、レシピエントマウスに移植、2週間後に骨髄、脾臓、胸腺細胞を回収し、T、B細胞への分化を検討した。その結果、miRNA-4導入細胞は骨髄内で優位にB細胞に分化することが分かった。 以上の結果から、miRNA-4がNotch1抑制性miRNAとして機能する可能性が示唆された。そこでCRISPR-Cas9システムを用いたmiRNA-4欠損マウスの作製を試みた。これまでにmiRNA-4ホモ欠損マウスを得ることに成功しており、今後はその解析を進めていきたい。
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