研究課題
肺癌は世界の癌死の第一位で本邦でも増加の一途にあり予防と新規治療法の開発は急務である。近年、肺癌でも抗体免疫療法の道が開かれたがその効果は未だ不十分であり、肺癌でも強力な免疫誘導効果をもたらす治療法の開発が必要である。我々は、肺癌のうち最も頻度の高い肺腺癌に発現するXAGE1抗原に注目し肺癌患者における宿主免疫応答を解析してきた。XAGE1はがん・精巣抗原で、成人正常組織では精巣にしかその発現を認めず、肺腺癌で約40%に発現を認める。されにXAGE1発現進行期肺腺癌の約半数でXAGE1特異抗体を産生することが判明した。またXAGE1抗体陽性の患者よりXAGE1抗原特異的なCD4およびCD8 T細胞を検出し、XAGE1は非常に免疫原性の強いがん・精巣抗原であることを明らかにした。本研究ではXAGE1に対する抗体反応を免疫バイオマーカーとして用い、肺腺癌の自然経過を前向き研究により観察した。進行期肺腺癌において、XAGE1抗原の陽性と陰性での全生存期間の差は認めなかった。しかしXAGE1がん抗原が陽性でXAGE1に対する潜在的な免疫応答を有する患者は、免疫応答がない患者と比較し、有意に生存期間の延長が認められた。(抗原陽性かつ免疫応答あり:中央生存期間33.3ヶ月、抗原陽性かつ免疫応答なし:13.7ヶ月 HR:0.34, P <0.0001)。またXAGE1がん抗原が陽性で、潜在的な免疫応答がない患者は、がん抗原陰性患者に比べEGFR遺伝子変異を有する群においてのみ予後不良であった(HR:3.0, P <0.006)。すなわち、進行期肺腺癌においてXAGE1抗体反応陽性患者は予後が著明に延長することが明らかとなった。XAGE1免疫の生存期間延長効果は注目すべき事実で、本抗原の強い免疫原性が、がんワクチンなどとして用いた場合にも発揮されることが十分に期待される。
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