研究課題/領域番号 |
26830118
|
研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
越智 宣昭 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80611615)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | EGFR / ペメトレキセド / 耐性化 / thymidylate synthase |
研究実績の概要 |
本研究では、非扁平上皮・非小細胞肺癌患者への標準治療薬であるペメトレキセド(pemetrexed: PEM)と上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異の関係、そしてPEM耐性機序の解明と、その克服方法について検討するべく、研究を進めている。申請者らがすでに樹立したEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌細胞株(PC-9)と野生型EGFR遺伝子を有する肺腺癌細胞株(A549)のPEM耐性細胞株(PC-9/PEMR, A549/PEMR)について、幾つかの殺細胞性抗がん剤との感受性を検討している。昨年に引き続きEGFR遺伝子exon21のL858R変異を有する肺腺癌細胞株(H3255)に対して、これまで同様の手法でPEMへ持続曝露による耐性誘導を試みたが、成長の緩徐なH3255特有の問題か耐性誘導を為し得なかった。代替としてEGFR遺伝子exon21 L858R変異+耐性遺伝子変異T790Mを持つH1975細胞についてPEM耐性誘導を試み、最終的に親株に比べ約300倍程度の耐性株を3クローン(H1975/PEMR A-C)樹立した。H1975/PEMRについて遺伝子発現を検討した結果、これまでの耐性株同様thymidylate synthase(TS)が有意に高発現していた。H1975/PEMRについても引き続き、他の細胞株同様の解析を進める。 我々の樹立したPC-9/PEMR, A549/PEMRにおいては thymidylate synthase(TS)の高発現がペメトレキセド耐性に関与していることから、TS特異的siRNAを用いてそれぞれTS発現を抑制することで、ペメトレキセドへの感受性が回復することを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初想定していたEGFR遺伝子Exon21 L858R変異細胞株であるH3255でのペメトレキセド(pemetrexed: PEM)耐性誘導が予定通り進んでいなかった。昨年の報告でオリジナルのH3255細胞株を購入し直すことを予定していたが、購入元のATCCでは明かな理由が不明なものの取扱いを停止しており、新規に入手するという方向性が断たれてしまった。そのため視点を変えて、H1975細胞株(L858R+T790M変異)にてPEM耐性株の樹立を行った。こちらは予定通り3クローンを新たに樹立出来たため、今後解析を進める予定である。 また実験計画で当初予定していた異種移植片マウスによるin vivoの実験系についてこれまで共同研究を行っていた岡山大学医学部内の動物実験施設が建て替えにより規模を縮小していることから、当面はin vivoの実験が行うのが困難となっている。自施設では来年度以降に動物実験が可能となるが、現状でのin vivo実験は、動物実験施設の立ち上げも含めてもう少し時間を要する。岡山大学あるいは当院での動物実験開始に備えて、in vitroの実験を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
現在3種類の細胞株でペメトレキセド(pemetrexed: PEM)耐性株を樹立出来たため、今後は引き続き遺伝子発現の追加解析、タンパク発現、siRNAによるTS knock downがGefitinib感受性に及ぼす影響について検討し、さらに耐性機序としての上皮間葉移行(EMT)関連マーカーの検索を行う。またin vivo実験についても実施できるよう引き続き模索する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた新たなEGFR遺伝子変異を有するペメトレキセド耐性細胞株(H3255/PEMR)の樹立が困難で、新たに購入しなおすことも細胞バンクからの購入が不可能となったことから、予定を変更し別のEGFR遺伝子変異細胞株(H1975, L858R+T790M変異株)により改めてペメトレキセド耐性株の樹立を行った。本研究の根本部分に関わる新たな耐性株樹立がひとまずは達成されたため、今後は、それらの細胞株について引き続き解析を進めて行く予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
前述の如く、in vivoでの異種移植片マウス実験が遂行が困難な状況にあるため、既存の細胞株についてのin vitroでの解析を中心に進めて行く。マイクロアレイや次世代シークエンサーによる他の遺伝子発現状況についても網羅的に検索することも検討中である。
|