研究実績の概要 |
本研究では、非扁平上皮・非小細胞肺癌患者への標準治療薬であるペメトレキセド(pemetrexed: PEM)と上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異の関係、そしてPEM耐性機序の解明と、その克服方法について検討するべく、研究を進めている。申請者らがすでに樹立したE GFR遺伝子変異陽性肺腺癌細胞株(PC-9)と野生型EGFR遺伝子を有する肺腺癌細胞株(A549)のPEM耐性細胞株(PC-9/PEMR, A549/PEMR)について、幾つかの殺細胞性抗がん剤との感受性を検討している。昨年までの検討でEGFR遺伝子exon21 L858R変異を持つH3255細胞でのPEM耐性株樹立は断念し、代わりにEGFR遺伝子exon21 L858R変異+耐性遺伝子変異T790Mを持つH1975細胞についてPEM耐性誘導を試みた。最終的に親株に比べ約300倍程度の耐性株を3クローン(H1975/PEMR A-C)を樹立した。H1975/PEMRについて遺伝子発現を検討した結果、これまでの耐性株同様thymidylate synthase(TS)が有意に高発現しておりPEM耐性機序を担っていると考えられた。 EMT関連マーカーとしてVimentin, E-cadherinを検討したところ、PC-9では変化を認めず、A549ではPEM耐性株でVimentinの発現上昇を認め、H1975においてはE-cadherinが消失し、Vimentinの発現が増加しており、耐性機序にEMTの関与も考えられた。親株と耐性株で細胞形態に大きな変化は認めなかった。 PC-9とPC-9/PEMRを用いてxenograftモデルによるin vivoでのPEMへの耐性化を検討したが、条件設定とPC-9/PEMR自体の細胞増殖の問題もあり、今回の検討ではPC-9/PEMRのPEM耐性を示すことができなかった。
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