研究課題
本研究の目的は、腫瘍関連抗原等の種々のマーカーに特異的なビオチン化抗体(BioAb)と、近赤外光感受性物質を結合させ たアビジン(AvIR)とを用いた、腫瘍細胞とその周辺微小環境とを併せて標的とする光免疫療法(PIT)の開発である。これまでに、主としてin vitroにおける検討によってAvIRを用いたPITの抗腫瘍効果を調べた。CEAあるいはEpCAMを安定発現させたCHO細胞を抗CEA-BioAbや抗EpCAM-BioAbで標識した後にAvIR を結合させて光照射を行い、細胞生存性を調べた。その結果、きわめて抗原選択的かつ強力な殺細胞効果が確認された。抗CEA-BioAbを用いたPITはヒト胃癌細胞株MKN-45-lucに対しても高選択的で強い抗腫瘍効果を発揮した。さらに、癌幹細胞マーカーであるCD44に対するBioAbでも効果的にMKN-45-luc細胞を殺傷できることを確認した。また、ヒト乳癌細胞株MCF-7-lucはCD44+/CD24lowの癌幹細胞様集団を含むが、MCF-7-luc細胞に対してビオチン化抗CD44抗体を用いたPITを行うことで腫瘍スフェア形成能を著しく減少させることができた。この結果は、癌幹細胞を標的としたPIT戦略の有効性を示すものであった。他方、癌関連線維芽細胞(CAF)は腫瘍の増殖・転移や再発に関与するが、これを標的としたPITについても検討した。ヒト乳癌組織由来の初代CAFとMCF-7-luc細胞とを軟寒天で隔てて共培養すると、MCF-7-lucのスフェア形成能が亢進する。これに対して、CAFのマーカーであるFAPのBioAbでAvIR-PITを施すと、スフェア形成能がMCF-7単独培養時と同等となったことから、CAFに対するPITは腫瘍制御に有効であることが判明した。現在、MCF-7-luc腫瘍移植マウスを用いた検討を進めている。
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Atlas Genet. Cytogenet. Oncol. Haematol.
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