研究実績の概要 |
1, PERKを中心としたERストレス関連分子の変動解析 前年度までに、M-COPAによってPERK経路を中心としたERストレス経路が活性化することを明らかにし、M-COPA感受性株であるヒト乳がん細胞株BSY-1に対してPERKのsiRNAを用いることで、M-COPA耐性となることを明らかにした。 本年度はさらに、M-COPA耐性株であるヒト結腸がん細胞株HT-29に対してERストレス抑制因子BiPのsiRNAを用いることでM-COPA感受性となることを見出した。さらに、レンチウイルスを用いてBiPのshRNAを導入したHT-29についてマウスゼノグラフトを作製し、in vivoでM-COPAに感受性化することを明らかにした。以上の結果から、in vitroだけでなく、in vivo においてもM-COPAの抗がん作用にはERストレス経路が関与することが明らかとなった。
2, M-COPA耐性細胞の解析 前年度までにin vitroで作製したM-COPA耐性BSY-1について、全エキソンシーケンス解析を行い、親株と比較した。その結果、M-COPAの作用点であり、輸送小胞の出芽に関わるGuanine nucleotide exchange factor (GEF)の一つであるGBF1について、1アミノ酸変異を見出した。変異がみられたアミノ酸は、GBF1のGTPase活性に重要なSec7ドメイン内に存在し、酵母からヒトまで高度に保存されたアミノ酸であった。また、このアミノ酸の変異は、Brefeldin Aに対する耐性化を引き起こすことが報告されている。これらの知見から、GBF1のアミノ酸変異がM-COPAに対する親和性の低下を引き起こし、耐性化の原因となることが考えられた。
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