研究課題/領域番号 |
26830125
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉山 直幸 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50545704)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロテオミクス / シグナル伝達 / リン酸化プロテオーム |
研究実績の概要 |
タンパク質の可逆的リン酸化は生体内のシグナル伝達に重要な役割を果たしており、そのリン酸化を大規模に解析可能なリン酸化プロテオミクス技術は、生命現象を理解する上で非常に有用である。本研究の目的は、チロシンリン酸化の解析に焦点を当て、酸化金属のクロマトグラフィー法の改良やアフィニティークロマトグラフィーの組み合わせにより、リン酸化チロシン含有ペプチドを選択的に濃縮する手法を開発し、細胞内で起きているチロシンリン酸化の大規模解析およびそのデータに基づくシグナル伝達ネットワーク解析を行う事である。 本年度の研究では最初に、酸化金属クロマトグラフィーを用いたリン酸化ペプチド濃縮によって、リン酸化チロシンを含むペプチドを選択的に濃縮することが可能な方法の開発を行った。吸着、溶出時の溶媒の種類やpHを変えて検討したが、有意な選択性の変化は観測されられなかった。一方、リン酸化ペプチド濃縮時に用いる酸化チタニウムや酸化ジルコニウムを別の酸化金属や金属化合物に変えて評価したところ、リン酸化チロシンに対する選択性が向上した担体が見出されたが、リン酸化ペプチドの回収率が大きく低下した。現時点では、酸化金属クロマトグラフィー単独でチロシンリン酸化を大規模に同定するための効率的な方法の確立に至っていない。 別法として、抗リン酸化チロシン抗体による免疫沈降と酸化金属クロマトグラフィーを組み合わせた方法によるリン酸化チロシン含有ペプチドの濃縮を行った。培養細胞やマウス組織から数千サイト以上のリン酸化チロシンの同定に成功した。また、濃縮したリン酸化ペプチドを脱リン酸化処理後にチロシンキナーゼによる再リン酸化を行うことで、生理的にリン酸化されていたと考えられるリン酸化チロシンの大規模同定に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
測定装置(質量分析計)が長期間故障していたことにより、計画段階で予定していた実験の一部を遂行することが出来なかった。その他の実施した研究については順調であり、また現在装置は復旧していることから今後予定している計画については問題ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度に着手できなかったリン酸化セリン/スレオニンの選択的脱リン酸化法の検討を行い、より大規模なリン酸化チロシン同定法の開発に取り組む、。また、当初の計画に従い、様々な摂動実験を行った培養細胞に対して、開発したリン酸化チロシン解析法と従来のリン酸化プロテオーム解析法を併用してリン酸化プロテオームデータを集積し、その情報に基づくシグナル伝達ネットワークの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めるために必要な測定装置が長期間故障したため、当初の実験計画が部分的に進めることができなかった。その為、実験に使用する消耗品の購入が不要となり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に進行できなかった実験に使用する消耗品(試薬、プラスチック器具、ガラス器具等)に使用する。
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