研究課題
DNAの相補鎖同士が共有結合で架橋されるDNA鎖間架橋(ICL)の修復は染色体安定性維持に必須である。高等真核生物では、重篤な遺伝病であるFanconi貧血(FA)の原因遺伝子産物群によりICLが修復される。このICL修復では、モノユビキチン化されたFANCI-FANCD2(ID)複合体により、FAN1ヌクレアーゼがリクルートされ、ICL除去や修復中間体の切断に関与すると考えられている。本研究では、主としてFAN1の生化学的機能解析を通し、ICL修復機構のより深い理解を目指す。FAN1は停止した複製フォークでみられる5´flap構造に対しエンドヌクレアーゼ活性を示すが、昨年度までに行った生化学的解析により、その基質認識機構のモデルを構築することができた。FAN1はエクソヌクレアーゼ活性も有することが報告されている。FAN1のこの活性による過剰な複製フォークの分解は、不適切な修復を引き起こし、染色体異常の要因となる。平成27年度の解析では、ID複合体によるFAN1のエクソヌクレアーゼ活性の制御機構の一端を明らかにした。ID複合体はヌクレオソーム形成活性を有するため、ヌクレオソームにおけるFAN1のエクソヌクレアーゼ活性を解析したところ、ヌクレオソーム上ではFAN1のエクソヌクレアーゼ活性が著しく阻害されることが明らかになった。更に、停止した複製フォークに同じく集積するRAD51によってもFAN1のエクソヌクレアーゼ活性は阻害された。興味深いことに、ID複合体はRAD51のDNAへの結合を安定化し、RAD51と協働してFAN1のエクソヌクレアーゼ活性を強く阻害した。これらの結果から、ID複合体がヌクレオソーム形成とRAD51のDNA結合の安定化により、FAN1のヌクレアーゼ活性を制御することが明らかになった。以上の成果は、研究代表者を第一著者として、現在論文投稿中である。
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