研究課題
次世代シークエンス技術の発展により疾患やヒト多様性に関わる膨大なレアバリアントが同定されているが、多くの場合、特にミスセンスやサイレントバリアントでは、個体レベルでの生物学的・機能的意義はほとんど不明である。これらのレアバリアントをノックインしたマウスは、in vivoにおけるレアバリアントの機能的解釈の有力なツールと成り得る。本研究では、我々が緑内障患者で新規に同定したレアバリアント、及び既知の緑内障レアバリアントをモデルとして、これらのノックインマウスを作製し、レアバリアントが緑内障発症の直接的な原因となりうるか、因果関係の検証を行った。我々が独自に開発した高効率ゲノム編集技術を駆使して、緑内障レアバリアント5つについて、ノックインマウスを作製する事に成功した。これらのノックインマウスの網膜を単離し、組織学的に緑内障に類似した表現型(網膜神経節細胞の減少等)を解析した。培養細胞での解析からタンパク質の機能低下を誘導する事が予想されていたミスセンスバリアントのノックインマウスは、予想外にも個体レベルでは緑内障様の異常を示さなかった。一方で、別のミスセンスバリアントのノックインマウスでは、網膜神経節細胞の減少が認められた。興味深い事に、このミスセンスバリアントはタンパク機能そのものではなく、スプライシングの異常を誘導する事により、タンパク機能をほぼ完全に喪失させ、これにより緑内障様の異常が引き起こされる事が明らかになった。これよりゲノム編集で高速・高効率に作製するノックインマウスを駆使して、レアバリアントの機能をin vivoで解析可能である事を明らかにできた。本研究はゲノム編集の活用による、ヒトゲノム多様性の個体レベルでの機能解釈のモデルとなる。
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Genome Biology
巻: 16 ページ: 87
10.1186/s13059-015-0653-x
http://www.tmd.ac.jp/mri/aud/index.html
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20150429/index.html