研究実績の概要 |
昨年度までに構築した大規模なレポーターアッセイ系を用い,研究室保有のプロモーターライブラリーから計12種類のプロモーター(ヒトEF1a1, GAPDH, DDX5, RPS12, PGK5, RBBP5, ARL6IP5, NTS, COMMD9, PSMD6, TPD52L1, CDK16)についてHEK293細胞中の転写活性計測を行った.このうちEF1a1, RPS12プロモーターについては複数種類の細胞(K562, HepG2, A549, HelaS3など)の細胞環境においても計測を行った.これらの情報を基に,塩基ごとの変異パターンの約4000種類の変数による線形モデルとして予測式を導出した.プロモーター配列上において活性への寄与が強い塩基のマッピングを行ったところ,TATAボックスや高GC領域など既知のシスエレメントを抽出することができた.また高いプロモーター活性を持つ領域は進化的に保存されている傾向にあった.また変異により新たに転写因子結合配列が出現し,活性が上昇する例を見つけることができた.以上のことから事前の情報が無くても一塩基単位の解像度によるプロモーター領域の詳細な解析が可能になったといえる.続いてプロモーターの配列改変について検討を行った.EF1a1プロモーターを例に,線形モデルから活性を上昇させると予測された箇所に塩基置換を施したプロモーターに対して,Lucアッセイによる活性測定を行った結果,モデルによる予測どおりの活性の変化を観測できた.さらに複数箇所に変異を導入した結果,変異の効果は相加的であり,幾つかの変異のパターンを組み合わせることで,任意のプロモーター活性を有する配列をデザインすることが可能であると示唆された.HEK293以外の細胞種に関しては,今後もトランスフェクションなどの条件を検討する必要があることなど課題が残っている. これらの成果を日本進化学会,BMB2015で発表をした.
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