昨年度までの研究により、新規方法論「構成的遺伝学」の確立に成功した。構成的遺伝学とは、研究対象となる生物学的システムが機能するために必要十分な遺伝子セットを、一度の実験で同定するための方法論である。モデル実験として、大腸菌ガラクトシド加水分解システム(必要十分条件はLacZ遺伝子)を選択し、このシステムの完全再構成が、一週間で達成できることを示していた。 本年度の研究では、構成的遺伝学の意義を明確に示すために、いまだ全貌がわかっていないシステムに対して構成的遺伝学を適用し、その完全再構成を目指した。研究対象としては、大腸菌のlinear-linear RecET相同組換えを選択した。linear-linear RecET相同組換えは、相同配列を持つ2つの遺伝子配列間で組換えを起こすシステムであり、大腸菌を用いたハイスループットな遺伝子操作法として重要なシステムである。本システムの完全再構成を達成し、その作動原理を明らかにすれば、より高効率な遺伝子操作法を確立できると期待される。 本年度の実験では、RecET相同組換えをまず大腸菌lysate中で再構成することに成功した。また、RuvCとClpXPが重要な役割に担っていることが判明した。
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