研究課題/領域番号 |
26830140
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
室井 敦 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (60609402)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 無細胞タンパク質合成 / 宿主因子 / プロテアーゼ |
研究実績の概要 |
HCVはC型肝炎ウイルスの原因ウイルスとして知られ、世界で1億8000万人以上の感染者が存在するとされる。感染後、その一部は肝硬変を経て肝がんへと進行し、国内だけで年間3万人以上が死亡する肝臓がん患者の8割以上に感染が認められる。そのため、有効な治療法の開発が求められている。HCVの感染・増殖には様々な宿主タンパク質が関与していることが知られているが、最近になって、HCVの持つプロテアーゼが宿主の免疫系に関わるいくつかのタンパク質を切断し不活化することが報告された。このことは、HCVが自らの持つプロテアーゼを用いて細胞内環境を積極的に改変している可能性を示唆するものである。そこで本研究では、コムギ無細胞タンパク質合成技術を用いウイルスプロテアーゼによって切断される宿主タンパク質を網羅的にスクリーニングすることで、HCV治療のターゲットとなりうる新たな宿主タンパク質を同定するとともに、HCVによる細胞内環境の改変についての新たな知見を得ることを目的とする。 26年度は主に、本研究において選抜された切断基質候補タンパク質を恒常的に発現する細胞株の作成、およびそれらの発現がHCVの感染・増殖に与える影響の解析を行った。細胞株の作成はレンチウイルスを用いて行い、本研究において同定された切断サイトの情報をもとに、野生型もしくは非切断型変異体を発現する細胞株をそれぞれ作成した。これまでに、候補タンパク質であるsTMP2, 15, 16, 18について恒常発現株を作成し、HCVを感染させ、一定時間経過後の細胞内ウイルス量をウェスタンブロットによって定量したところ、sTMP2、15を発現させた細胞株では、野生型、変異体のいずれかにおいてウイルス量の減少がみられた。このことから、これらの候補タンパク質がHCVの感染・増殖に関わっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
26年度には、候補タンパク質の恒常発現細胞株の作成、それらを用いたHCVの感染・増殖能解析、および候補タンパク質の切断サイトの同定を予定していた。恒常発現株の作成および感染・増殖能解析については予定通りに進行しているが、切断サイトの同定が完了していないため、全体としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1)候補タンパク質恒常発現株、ノックダウン細胞株の作成および感染実験 26年度から進行中の本項目について継続して行う。各候補タンパク質の恒常発現株およびノックダウン細胞株を作成し、それらにおけるHCVの感染・増殖能の変化を検証することで、各候補タンパク質の機能についての情報を得る。現在、レンチウイルスベクターを用いて各細胞株の作成を行っているが、スループット性の向上のため、ノックダウン細胞株については一部siRNAによるノックダウンに切り替えることを検討している。 2)切断サイトの同定 26年度から進行中の本項目について継続して行う。各候補タンパク質について、予測される切断サイトを改変した変異型タンパク質を合成し、プロテアーゼによる切断を確認することで切断サイトを同定する。 3)候補タンパク質の機能解析 各候補タンパク質のHCVの感染・増殖における役割について解析を行う。恒常発現株、ノックダウン細胞株を用いた感染実験の結果、および各タンパク質の配列情報から、機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部計画を完遂できなかった実験が発生したため、購入を予定していた物品について費用を27年度へ繰り越した。また、26年度中に国際学会への参加を予定していたが、27年度4月に開催された学会への参加へ切り替えたためその費用を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
申請書に記載した実験を遂行することで、次年度使用額も含め、請求した助成金を予定通りに使用する。また、一部実験手法の変更を計画しているが、請求額内で遂行可能である。
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