研究課題/領域番号 |
26830141
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
町田 幸大 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20553093)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シャペロン / タンパク質合成 / タンパク質フォールディング / 真核生物 |
研究実績の概要 |
課題達成の鍵となるヒト因子由来再構成型タンパク質合成システムの維持に関しては、HeLaS3細胞から精製したネイティブの40Sリボソーム、60Sリボソーム、eEF2、tRNAsとBHK21細胞や大腸菌を利用して発現させたリコンビナントのeRFs、T7RNA polymerase、ARSsは恒常的に活性を保持した因子を精製することに成功している。上記因子に以後の実験に影響を与えるようなシャペロン群の混入がないことも各シャペロンの抗体を利用して明らかにした。ただし、リコンビナントeEF1sに関してはシステムを駆動させるために大量に反応系に添加する必要があるため、これに伴うHSP70の混入が問題となった。そこでeEF1sの従来の精製法に32度30分間のATP-Mg処理とゲル濾過カラムクロマトグラフィーの操作を追加することによってeEF1sと共精製されてきていたHSP70を除くことに成功した。一方でeEF1sの活性が1/10に低下することも明らかになった。シャペロン群の発現と精製に関しては、当初予定していたCCT、NAC、PFDN、HSP110、HSC70、HSP40に加え、リボソームトンネル近傍に結合しているRibosome-associated complex (RAC) の単離と発現系の構築を行った。シャペロン群はBHK21細胞や大腸菌を利用して全てリコンビナント体として精製した。基質に関しては、CCTのインタラクトームの内、ベータアクチンとハンチントンExon1をクローニングし、ヒト因子由来再構成型タンパク質合成システム発現用のベクターを構築した。必須シャペロンであるCCTとPFDNを主軸としてその他のシャペロン因子を様々な組合せで添加したヒト因子由来再構成型タンパク質合成システムでベータアクチンとハンチントンExon1を合成し、シャペロンネットワークの機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題達成の鍵となるヒト因子由来再構成型タンパク質合成システムの維持に関しては、翻訳伸長因子の一つであるeEF1sへのシャペロン因子HSP70のコンタミネーションが問題となったが、ATP-Mg処理とゲル濾過クロマトグラフィーによって解決した。さらに、シャペロン関連因子に関しては、当初予定していたCCT、NAC、PFDN、HSP110、HSC70、HSP40に加え、リボソームトンネル近傍に結合しているRibosome-associated complex (RAC) の単離と発現系の構築、及び全てのシャペロン因子をリコンビナント体として精製することにも成功した。必須シャペロンであるCCTとPFDの主要基質であるベータアクチン新生鎖のフォールディングに関しても現在解析を進めており、非常に興味深い結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、CCTインタラクトームの網羅的解析を予定していたが、ヒト因子由来再構成型タンパク質合成システムの維持労力を考えると現実的ではないことが分かった。そこで今後は海シイタケ由来ルシフェラーゼ(ヒトの遺伝子ではない=非基質)、ヒトベータアクチン(ヒトの遺伝子でCCTとPFDの主要基質)といった二つのモデル基質に加え、ヒトの神経変性疾患ハンチントン病の原因遺伝子であるHTT exon1など、遺伝子産物のフォールディング状態と疾患の病態に関連が示唆されているヒトの遺伝子に着目することにした。解析の範囲を疾患欄連遺伝子に限定することで、疾患とヒトのシャペロンのネットワークの機能的相互作用を明らかにして行くことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室単位で使用できる共通経費に余裕があったため、そちらを優先して使用したことが次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画書に記載の通り、主に消耗品を購入するために使用する予定である。
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