研究課題である「新生タンパク質とシャペロン関連因子との機能的ネットワーク」を達成するために、まず、反応系として利用するヒト因子由来再構成型タンパク質合成システムを安定に供給するための手法確立を行った。具体的には、構成因子群の精製法を見直しシャペロンフリーのシステム構築に成功した。一方、シャペロン関連因子については、ヒトの主要シャペロンであるNAC、RAC、Hsp40、Hsc70、Hsp110、Hsp90、p23、PFD、CCTに着目し、これら全ての遺伝子をクローニングし、大腸菌発現系、昆虫細胞発現系、真核細胞発現系などを駆使し、リコンビナント体の発現・精製方法を確立した。ヒト因子由来再構成型タンパク質合成システムで、ヒトのベータアクチンやダイニンインターメディエイトチェイン2(IC2)を合成する際に、シャペロン群を様々な組み合わせで添加することで、シャペロン因子の機能的ネットワークが新生鎖のフォールディングに与える影響を解析した。その結果、ベータアクチンに関しては、PFDとCCTのみの協奏的ネットワークが必須であり、PFDは新生アクチンにコトランスレーショナルに結合しアクチンのフォールディング中間体を安定化させ、これをCCTへと受け渡すことでアクチンのフォールディングが達成されることを明らかにした。またIC2に関しては、リボソームからリリースされた新生IC2にCCTのみが結合し、その安定性を向上させていることを新規に発見した。以上の研究成果は、本研究で提案した「ヒト因子由来の再構成型タンパク質合成システム」と「ヒトのシャペロン因子」を組み合わせた解析システムならではのものである。現在は、この解析システムを利用し、神経変性疾患に関与するハンチントンタンパク質の新生とシャペロン群による凝集抑制についても解析を進めており、本研究を発展させた試験管内疾患モデルの構築を目指している。
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