研究課題/領域番号 |
26830143
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
江田 慧子 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (90648461)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チャマダラセセリ / 生息域外保全 / 生息域内保全 / 野焼き |
研究実績の概要 |
2年目はチャマダラセセリの生息環境を調査し、室内で生態的なデータを蓄積した。 1.コドラート調査 木曽町開田高原における本種の生息地を、春に野焼きを行う野焼き区、野焼きを行わない非野焼き区、春に野焼きを行わず夏に草刈りを行う草刈り区に区分した。各区画コドラートを設置し、コドラート内のミツバツチグリとキジムシロの葉数、葉の縦・横・草丈を測定した。また被度と裸地率を求めるために、全てのコドラートを調査毎にデジタルカメラで撮影した。 2.非破壊での餌資源の測定方法の開発 チャマダラセセリの幼虫は営巣することが知られている。そこで、野外で生息している幼虫4個体を1週間毎に観察し、営巣している食草のサイズを測定した。次にミツバツチグリの葉200枚を採集しスキャナーで取り込み画像解析ソフトImageJによって面積を算出した。これにより葉の縦または横の長さを測定するだけで面積を容易に算出することが可能となり、本種の産卵選好や幼虫の利用する葉の大きさを解析した。 3.食草選択実験 チャマダラセセリ27個体を用い、25℃、12L:12Dの条件で飼育した。異なる植物で個別飼育し、幼虫期間、蛹体重を測定した。その結果、平均幼虫期間はミツバツチグリで42.2日、キジムシロで37.0日、キンミズヒキで50.5日、オランダイチゴで45.5日となった。また平均蛹体重はミツバツチグリで0.1176g、キジムシロで0.1278g、キンミズヒキで0.0910g、オランダイチゴで0.1098gとなった。さらに生存率はミツバツチグリで71.43%、キジムシロで100%、キンミズヒキで60%、オランダイチゴで80%となった。 4.海外調査 韓国での野外調査を行った。その結果ソウル近郊の生息地として登録された場所では成虫を確認することができなかった。そこで、済州島で再度調査を行ったところ4ヶ所で生息を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目もチャマダラセセリの長野県開田高原個体群は危機的な状況であることから、開田高原個体群の研究を行うことができなかった。そこで、チャマダラセセリのデータだけではなく、生息環境の調査を行い、データを算出することができた。 またチャマダラセセリが好む環境を測定する方法を開発したため、今後の調査で活用できると考えられる。 チャマダラセセリは飼育等の生態学的知見が乏しく、保全が進まないのが現状である。円滑な飼育方法を確立するための室内飼育実験を予定より多く行うことができた。 海外調査でもチャマダラセセリを発見することができ、サンプルも確保することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は野外調査と室内飼育実験を行い、データの取りまとめを行う。 野外調査においてはチャマダラセセリの卵分布調査が、当初計画していた開田高原では個体群がほぼ絶滅しているため、データを取ることができない。そこで、生息している他地域でデータを算出する。 海外と日本の個体群におけるDNA解析を行い、個体群に差があるか検討する。 室内飼育実験のデータより有効積算温度と発育零点の算出を行う。 これらを取りまとめ、論文化の作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、研究機関変更が決定しており、異動のため、海外調査が計画よりも少なかったことがあげられる。また、研究成果が学会発表の水準にまでは達しなかったため、学会発表、論文投稿費が発生しなかったことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の金額と次年度に請求する研究費を合わせた使用計画としては、実験設備の物品の購入と学会発表、論文投稿費を増やすこと、野外調査回数を増やすことを計画している。
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