研究課題
本研究の目的の一つは、西南諸島の両生類絶滅危惧種について、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)遺伝子を単離し、その抗原認識部位の多様性を調査することで、疫学的リスクを予測することである。MHC は抗原を認識し免疫応答を開始させる重要な分子であり、一般的に、MHC の多型性と病原体への抵抗性との相関が知られている。特に絶滅危惧種においては、集団の疫学的リスク及び集団の存続可能性を検証するための重要な指標である。また、北米産のカエルにおいてツボカビ耐性との関連も示唆されている。本年度は、MHCクラスII遺伝子のcDNA全長配列の決定と分子進化学的解析を予定していたが、近年の配列解読技術の進展により、次世代シークエンサーを利用したトランスクリプトーム解析を利用することによって、一度に複数の対象遺伝子を同定できる可能性が高まったため、これを実施した。具体的には、対象となる絶滅危惧種のうちコガタハナサキガエルを除く6種について、脾臓及び、皮膚よりtotal RNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて、mRNAの配列を網羅的に決定した。その結果、それぞれの種において、MHCクラスI、クラスII、また抗菌ペプチド等の免疫関連遺伝子が単離できた。今後得られたデータについて精査するとともに、集団におけるそれらの遺伝子の発現量および、多様性について検証していく。また、近縁種間でのそれらの遺伝子の発現プロファイルについても、比較を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究の対象である、ほぼすべての絶滅危惧種において、主要組織適合複合体遺伝子のおおよそのレパートリーを単離できている。
現在得られているデータについて精査するとともに、集団におけるそれらの遺伝子の発現量および、多様性について検証していく。また、近縁種間でのそれらの遺伝子の発現プロファイルについても、比較を行う予定である。
当該年度は次世代シークエンサー利用に係る外部委託費用として、費用を計上していたが、計画をした当初にくらべてコストが下がってきており、実際の請求金額との間に差異が生じた。
今後の研究計画において必要となる試薬類の購入に充てる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Journal of Heredity
巻: 106 ページ: 131-137
10.1093/jhered/esu071
Current Hepetology
巻: 34 ページ: 89-94
10.5358/hsj.34.89
Cytogenetic and Genome Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Turkish Journal of Zoology
巻: 38 ページ: 1-22
10.3906/zoo-1308-36
Genes & Genetic Systems
巻: 89 ページ: 35-39
10.1266/ggs.89.35
巻: 89 ページ: 137-141
10.1266/ggs.89.137
Treubia
巻: 41 ページ: 1-16