研究課題
近年、生息域の破壊や地球温暖化、ツボカビ感染などにより、両生類が減少している。日本産両生類についても半数以上が絶滅危惧種に該当し、多くが西南諸島固有種に集中している。そこで、本研究では抗原を認識し免疫応答を開始させる重要な分子である主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を単離し、抗原認識部位の多様性を調査することで、疫学的リスクを予測し、対象種の保全に役立てることを目的に研究を行った。最終年度については、MHCを含む獲得免疫及び、自然免疫のレパートリーと種間及び島間での遺伝子発現の違いを検証するために、これまでにそれぞれの種の皮膚及び、脾臓から得たmRNAを次世代シークエンサーにより解析した大規模データに基づいて、比較トランスクリプトームを行った。その結果、奄美大島及び沖縄島に生息する姉妹種の間での発現遺伝子の類似性と、それぞれの島の中での他種との違いが明らかとなった。また、すべての種において発現していた遺伝子のセットを網羅的な相同性比較により構築し、配列比較によってそれぞれの遺伝子の進化速度の比較を行った。その結果、血球関連遺伝子などにおいて進化速度が速くなっていることが推測された。さらに、MHC遺伝子についてはすべての種において相同な遺伝子配列を決定することに成功し、詳細な系統解析を行った。その結果、いくつかの姉妹種において種をまたいで良く似た遺伝子配列を有していることが明らかとなった。また、比較対象として本州産のアカガエル類についてもMHC遺伝子を決定し、その多様性を検証した。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件)
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