中深度サンゴ礁の分布調査を、琉球列島の西表島、内離島、外離島、鳩間島、石垣島、宮古島、沖縄島、久米島、奄美大島周辺、などで実施した。その結果、西表島・石垣島周辺の特に湾内やそれに隣接する湾口部周辺において、想像を超える規模の中深度サンゴ礁を発見し、それらの分布場所を記録することができた。また、奄美大島では瀬戸内町の大島海峡にて調査を行った結果、透明度が低く水深が比較的浅い環境に、中深度サンゴ礁の主要なメンバーの1グループであるセンベイサンゴ類が多産していたことから、同地にも透明度が高く水深のある環境があれば、中深度群集が発達する潜在性が示された。 中深度サンゴ群集の構成種と地形の関連性について、海底の傾斜がゆるやかな内湾にはリュウモンサンゴのような大型な葉状のサンゴ類が多く、傾斜が大きい場所には枝状のミドリイシ類や細い葉状のセンベイサンゴ類などのサンゴ類が多い傾向にあった。しかし、斜面が緩やかでもホソヅツミドリイシやトゲミドリイシ類の1種が優占したり、また潮通しのよい場所でもリュウモンサンゴが優占するなど、例外も多く見られた。これらの結果より、中深度サンゴ群集の出現パターンを類型化するにはさらに多くの事例を検証する必要があることが分かった。 西表島周辺より発見された中深度サンゴ礁より代表的な場所を3カ所選定し、中深度及びその上方に位置する上部浅海帯 (~20m) の造礁性イシサンゴ類群集の水温や光強度等を記録するロガーを設置して環境情報を比較したところ、上部中深度とされる水深30m以深の光強度を、造礁性イシサンゴ類の多様性が高い上部浅海帯の水深10mと比べると、40mからは急に減少して8.2%、50mでは8.1%となった。このことから、中深度サンゴ群集は浅場に生息するサンゴ類に比べて、非常に弱い光を好んでいることが追認された。
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