本研究では、すべての分類群が絶滅危惧種である日本産ハナシノブ属について、標本データに基づく詳細な分布図の作成、MIG-seq法による大量の一塩基多型データの取得を行い、その系統関係と集団構造を明らかにした。その結果、国内に大きく4つの遺伝的なクラスターが認識でき、その分布は地理的な構造と生育環境に対応した結果であった。これらの情報は属レベルで絶滅が危惧されている日本産ハナシノブ属植物の保全や管理単位の検討の基礎データになると同時に広域的な保全策の策定に役立つものと考えられる。一方で、局所適応に関連したマーカーの探索は十分なデータが得られなかったこともあり、詳細な検討はできなかった。
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