研究課題/領域番号 |
26840002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松尾 芳隆 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00725252)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リボソーム / 品質管理 |
研究実績の概要 |
細胞内では。遺伝子発現の各過程における誤りや外界からのストレスによって様々な異常mRNAや異常タンパク質が合成される。mRNAとタンパク質の品質管理機構は、この様な異常産物を認識し排除することで正確な遺伝子発現を維持している。本研究では、これらの品質管理機構の各反応反応過程の分子機構の理解を目指し、各反応過程における複合体の精製およびその解析を行っている。 mRNA上に連続したレアコドンや連続した塩基性アミノ酸配列などが出現するとリボソームによる翻訳伸長反応が停滞する。細胞はこの翻訳停滞を異常な翻訳と認識し、翻訳中の異常mRNAの分子内切断(NGD; No Go Decay)と、その異常mRNAに由来する新生ペプチド鎖の特異的分解機構(RQC; Ribosome Quality Control)を誘導する。これら2つの品質管理機構はE3ユビキチンライゲースであるHel2による因子Xのユビキチン化に依存していることが我々のグループの研究によって明らかになっている。そこで、平成26年度は、NGDとRQCという2つの品質管理機構に焦点を当て、連続した塩基性アミノ酸配列に起因する翻訳停滞複合体の精製法の検討を行った。まず、Hel2にアフィニティータグを付加させた出芽酵母株を作製し、2段階アフィニティー精製を行った結果、Hel2を含む品質管理機構複合体の精製に成功した。次に、連続した塩基性配列を含む新生ペプチド鎖とリボソームを含む複合体の精製条件の検討も行った結果、途中まで翻訳された新生ペプチド鎖とリボソームを含む複合体、すなわち翻訳が停滞したリボソームを特異的に精製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
翻訳停滞に起因する品質管理複合体の精製法を確立しており、目的としている品質管理機構の各反応過程に関与する新規因子の同定を進める段階まで到達している。加えて、同様の精製法を用いて、低温電子顕微鏡やCRAC法を用いた構造解析を行う条件も既に確立している。
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今後の研究の推進方策 |
翻訳停滞に起因する2つの品質管理機構の分子機構を理解するために、各反応中間複合体をH26年度に確立した精製法を用いて精製し、得られた複合体に含まれる新規因子を質量分析系により同定する。また、同様の精製法を用いて、Hel2や新規因子が結合するリボソーム上の結合領域をCRAC法にて決定する。さらに、Hel2-リボソーム複合体の低温電子顕微鏡による解析によって、翻訳停滞に起因するHel2のより詳細な分子機能、さらには翻訳停滞中のリボソームの構造観察を進めていきたい。
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