細胞内では遺伝子発現の各過程における誤りや外界からのストレスによって様々な異常mRNAや異常タンパク質が合成される。mRNAとタンパク質の品質管理機構は、この様な異常産物を認識し排除することで正確な遺伝子発現を維持している。本研究課題では、これらの品質管理機構の各反応過程の分子機構の理解を目指し、各反応過程における複合体の精製およびその解析を行った。 mRNA上に連続したレアコドンや連続した塩基性アミノ酸配列などが出現するとリボソームによる翻訳伸長反応が停滞する。細胞はこの翻訳停滞を異常な翻訳と認識し、翻訳中の異常mRNAの分子内切断(NGD; No Go Decay)とその異常mRNAに由来する新生ペプチド鎖の特異的分解機構(RQC; Ribosome associated quality conyrol)を誘導する。これら2つの品質管理機構はE3ユビキチンライゲースであるHel2のユビキチン化に依存していることが我々のグループの研究によって明らかになっている。平成26年度までに、Hel2を含む複合体、および連続した塩基性アミノ酸配列に起因する翻訳停滞複合体の特異的精製法を樹立している。そこで平成27年度は各特異的複合体に含まれる因子の探索を行い、翻訳伸長阻害に起因する異常新生ペプチド鎖の品質管理機構に関与する新たな因子の同定に成功した。
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