研究課題/領域番号 |
26840009
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川上 慶 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD) (00722836)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 染色体 / ヘテロクロマチン / 分裂酵母 / RNAi / 低分子RNA |
研究実績の概要 |
酵母から高等真核生物まで、ヘテロクロマチン存在ゲノム領域は核周縁部にクラスタリングされている。酵母ではテロメアヘテロクロマチン領域がRNAi依存的に核膜近傍にクラスターを形成していることがわかっている。このようなクラスター化は、離れたゲノム領域を効率良く制御する仕組みとして重要だと考えられるが、その意義と分子メカニズムに関しては十分な研究がなされていない。本研究では、ヘテロクロマチン構造を核の中でクラスターさせ、一括に制御する分子メカニズムを解明することを目的とする。平成27年度までに、RNAiに依存してヘテロクロマチンを異所的に形成する系の確立に成功しており、かつ、ヘテロクロマチンの拡張のみに異常を示す変異体を同定することができた。平成28年度は、この拡張変異体中において、ヒストン脱メチル化酵素だと考えられているタンパク質Epe1のヘテロクロマチン局在が上昇していることを明らかにした。また、以前に自らが単離したヘテロクロマチンの遺伝子サイレンシングに影響を与える核膜因子Lem2に関して共同研究を行い、核膜因子がヘテロクロマチン形成に重要な機能があることを示した(Tange et al. 2016)。興味深いことに、別のグループから、Lem2はEpe1と拮抗してヘテロクロマチンの遺伝子サイレンシングを促進することが報告された(Barrales et al. 2016)。これらの結果は、核膜因子によるヘテロクロマチンの拡張を空間的に制御する仕組みがあることを示唆している。これらの結果を考慮して、ヘテロクロマチンの拡張変異体や核膜因子の変異体を用いて解析を行う事で、本研究の理解がより深まると考えられた。そのため、研究期間を平成29年度まで延長し、引き続き研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘテロクロマチンのサイズをコントロールする仕組みに関して、その分子メカニズムを明らかにできた。また、共同研究で、核膜因子によるヘテロクロマチン制御機構に関して報告出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後はヘテロクロマチン領域の核内挙動をLacO-LacIシステム、FISHなどで解析する。その際、ヘテロクロマチンの拡張に異常が生じる変異体や、核膜因子の変異体なども同様に解析することで、新たなヘテロクロマチンの空間的制御機構の発見を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請研究機関は、平成26年度から平成28年度までの予定であったが、下記の理由により機関を平成29年度まで延長し、それに伴い、次年度使用額が発生した。本研究は計画通りに遂行され順調に進行したが、染色体の空間的制御の分子メカニズムを解析する上で、非常に興味深い酵母変異体を予想外に単離した。この変異体の解析結果も含めることで、本申請研究の理解がより深まることが期待されるため、追加の実験が必要である。このような理由から、補助事業期間の延長を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
抗体免疫染色法やクロマチン免疫沈降法に使用する抗体や、リアルタイムPCRに使用する試薬などを購入する予定である。
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