研究課題/領域番号 |
26840014
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横川 真梨子 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 特任助教 (60648020)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | NMR / チロシンキナーゼ |
研究実績の概要 |
チロシンキナーゼは、基質のチロシン残基のリン酸化を触媒する酵素である。リン酸化されたチロシン残基と他の蛋白質との相互作用を介して、チロシンキナーゼは多岐にわたる生体機能に関与している。特に、チロシンキナーゼの活性制御機構の破たんが多くのがんにおいて報告されていることから、チロシンキナーゼが機能する際の構造動態を明らかとすることは、創薬や生命現象を解明するうえで重要である。 本研究において申請者は、チロシンキナーゼに内在する構造平衡をNMR法により解析することで、チロシンキナーゼの活性を担う動的構造を明らかとすることを目的としている。本年度はSrcとAblを研究対象とし、キナーゼドメインの主鎖アミド基およびメチオニン残基の側鎖メチル基を観測対象としたNMR解析を行った。Srcの主鎖アミド基を観測対象とした解析により、調製した蛋白質が高次構造を形成しており、ATPの結合やチロシン残基のリン酸化に伴いNMRスペクトルが変化することを確認した。メチオニン残基の側鎖メチル基についても同様に、ATPの結合、リン酸化に伴うスペクトル変化を確認した。アミノ酸配列中のすべてのメチオニン残基メチル基のNMRシグナルが観測されていることを確認し、部位特異的変異導入により各シグナルの帰属を確立した。Ablについては、メチオニン残基の側鎖メチル基のNMR測定は行ったが、観測されたシグナル数がアミノ酸配列中のメチオニン残基数より少なく、NMRスペクトルの質も低かったため、さらなる測定条件の検討が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Srcのキナーゼドメインに関しては、順調に進捗しており、薬剤結合時やSH3、SH2ドメインを含むSrc全長の解析もNMRスペクトル取得済み、あるいはサンプル調製済みである。Ablのキナーゼドメインに関しては、十分な収量が得られたため、予定していたリアルタイム定量PCR装置を利用したthermal shift assayに先駆けてNMR測定を試みたが、解析に耐えうる質のNMRスペクトルを得ることができなかった。しかし、収量が十分であり、多くのパラメータについて条件検討ができるため、最適条件の決定は比較的容易であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Srcについて、薬剤結合時、およびキナーゼドメインの活性制御ドメインであるSH3、SH2ドメインを含むキナーゼ全長のNMRスペクトルを取得し、構造情報を得る。 Ablについては、条件検討・NMRシグナルの帰属を行い、Srcと同様に薬剤結合時や制御ドメイン存在時のNMRスペクトルを取得し、構造情報を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進める順番に若干の変更が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画していた実験を行うため、前年度に購入を見送ったブロックインキュベーター等の設備備品や消耗品等を購入する予定である。
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