研究課題
チロシンキナーゼは、基質のチロシン残基のリン酸化を触媒する酵素である。リン酸化されたチロシン残基と他の蛋白質との相互作用を介して、チロシンキナーゼは多岐にわたる生体機能に関与している。アミノ酸変異等によるチロシンキナーゼの活性制御機構の破たんが多くのがんにおいて報告されていることから、チロシンキナーゼが機能する際の構造動態を明らかとすることは、創薬や生命現象を解明するうえで重要である。本研究において申請者は、チロシンキナーゼに内在する構造平衡をNMR法により解析することで、チロシンキナーゼの活性を担う動的構造を明らかにすることを目的とした。具体的には、非受容体型チロシンキナーゼであるc-Src、Fyn、c-Ablの全長またはキナーゼドメインを研究対象とし、それぞれ大腸菌での発現と精製プロトコルを確立した。調製したタンパク質のリン酸化状態を、リン酸化チロシンに対する特異的抗体を用いたウェスタンブロット法および非変性PAGEにより調べることで、目的のキナーゼを非リン酸化体として調製したのち、c-SrcとFynはCskによるリン酸化、およびATP添加による自己リン酸化をin vitroにて行うことで、各キナーゼのリン酸体を調製した。調製した各種タンパク質の主鎖アミド基や側鎖メチル基を観測対象としたNMR解析を行った。その結果、ATPの非加水分解アナログであるAMPPNPの結合や薬剤の結合、チロシン残基のリン酸化等に伴うNMRスペクトルの変化を検出することに成功した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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